まひろの自慢で家族ドン引き…暴走する主人公の傍でこそ輝くキャラクターとは? 大河ドラマ『光る君へ』第37話考察レビュー
吉高由里子が主演を務める大河ドラマ『光る君へ』(NHK総合)。平安時代中期を舞台に紫式部の生涯を描く。久しぶりに里帰りすることになったまひろ。しかし家族との間には溝ができてしまう。今回は、第37話の物語を振り返るレビューをお届け。【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】(文・苫とり子) 【写真】吉高由里子の十二単姿が美しい…貴重な未公開写真はこちら。NHK大河ドラマ『光る君へ』劇中カット一覧
霞んで見える実家での生活
一条天皇(塩野瑛久)の皇子・敦成親王の「五十日の祝」を無事に終えて中宮・彰子(見上愛)が内裏に戻る日も、もう間もなく。『光る君へ』第37回では、まひろ(吉高由里子)が里帰りを申し出る。長らく留守にしている実家が気になったのだ。 家族のために出仕しているまひろを、父・為時(岸谷五朗)や従者たちは歓迎してくれる。だが、いつの間にか成長した娘・賢子(梨里花)は「内裏でのお仕事ご苦労様にございます」とどこか他人行儀だ。まひろの姿を認めるまでは無邪気な笑顔だったのに。もはや賢子にとっては、まひろのいない生活が当たり前になっているのだろう。 一方、まひろも煌びやかな内裏での生活に慣れたせいか、実家がやけにみすぼらしく見えた。さらにはその夜、久しぶりに家族と食卓を囲み、嬉しくてつい酒を飲みすぎたのか。泥酔したまひろは、「殿方たちはすっかり酔っぱらって私に絡んできたお方もいらっしゃったのよ」「お菓子もお料理も食べきれないほど並んでいたの」と宮中での華やかな暮らしを上機嫌で語り始める。
連続テレビ小説『虎に翼』との類似点
そんなまひろを見て思い出さずにいられなかったのは、先日最終回を迎えた連続テレビ小説『虎に翼』(NHK総合)でヒロインの寅子(伊藤沙莉)が家族にアメリカ視察のお土産を買って帰る場面だ。 すっかりアメリカナイズされたファッションで戻ってきた寅子は、娘の面倒を見てくれている義姉の花江(森田望智)に美容クリームや英語のレシピ本、子供達にお菓子と小説を“良かれと思って”渡すが反応はイマイチ。 たしかに花江は女学校で英語をある程度習得していたが、家事や子供たちのお世話で忙しい中、翻訳する暇などないし、子供たちは子供たちで寅子の前ではしっかりと勉強もする“いい子”のふりをしている。そのことに寅子が全く無自覚であることを、お土産が示していた。 まひろも普段慎ましく暮らしている家族が宮中での贅沢な暮らしぶりを聞かされてどう思うのか、母親と離れて寂しい思いはあれど、暮らしのために仕方がないと自分を納得させてきたであろう賢子が充実した母親の顔を見せられてどう思うのか、全く想像できていない。 奇しくも同時期に誕生した2人のヒロイン、寅子とまひろは驚くほど状況が似ている。男性が権力を持つ社会に出ていくところも、早くに夫を亡くして一家の大黒柱になり、仕事のために子供の世話を家族に託しているところも、そんな中で子供との心理的な距離が出来てしまうところも…。どちらも女性の自己実現という大きなテーマを背負っている。 そして子供の心情に寄り添うのが、ヒロインの弟という点も一緒だ。寅子の弟・直明(三山凌輝)が勤勉な好青年だったのに対し、まひろの弟・惟規(高杉真宙)は勉学が苦手でマイペースな青年。一見正反対だが、2人とも察しが良く、周りの変化に誰よりも早く気づく。無自覚に家族をドン引きさせているまひろのことも、「姉上、飲みすぎだよ」と即座に諌める惟規。デキる男だ。