衆院補選で示された「政治への怒りと諦め」…与野党ともに求められる変革 豊田真由子が読み解く衆院補選結果
島根1区
勝利した立憲の亀井氏は、“保守票も取れる野党候補”であり、「9:6:3の法則(野党支持層の9割、無党派層の6割、保守層の3割を獲得すれば、野党の候補が勝てる)」を満たす候補者でした。実際に、無党派層の7割、自民支持層の3割、公明支持層の4割を取っています。 亀井氏は、岩倉具視氏を祖先に持つピカピカの家柄で、自身も参院・衆院議員を務めましたが、父親の久興氏は自民党で国土庁長官まで務め、父子ともに、地元では高い知名度がありました。 自民党への世襲批判がよくなされますが、所詮、野党も同じ(世襲議員の占める割合は違いますが)というところは、「お金持ちが圧倒的に有利(深刻な政治内経済格差)」という、日本政治の根本的な問題のひとつだと思います。 自民の錦織氏は、元財務官僚としての政策能力やがむしゃらに働くポテンシャルは十分あったと思いますが、いかんせん、逆風が強かったと思います。 島根は「自民党王国」とされ、自民が議席を独占しているという意味では確かにそうなのですが、前回衆院選は「細田前衆院議長6割、亀井氏4割」という得票で、亀井氏にすでに一定のポテンシャルもある中、今回派閥裏金問題の渦中で、自公の動きもフル稼働とは全く言えず(公明の推薦が出たのは告示日の前日)、岸田首相はじめ幹部が応援に入りましたが、聴衆の数や盛り上がりにも欠けていたようです。また、“弔い合戦”とはいっても、親族ではないので、その意味合いも薄くなります。 これまで国政選挙の補選では、自民党は、派閥の勢力拡大につながるため、候補者が所属する予定の派閥の議員や秘書が総出で応援に入る、というのが通例でしたが、派閥解散により、そういったことは行われなくなり、代わりに今回は、中国ブロック選出議員の事務所を中心に行われたものの、やはり派閥の持つ絆やポテンシャルには遠く及ばなかったと思います。 島根県では、国会議員は、衆が自民1名、立憲1名、参が自民2名。県議(定数36)は、自民26、公明2、立憲4、国民1、共産2という勢力図です。