暫定2位浮上のJ2大宮を変えた高木琢也監督の手腕とは?
J1昇格を巡って空前の大混戦が続いてきたJ2の上位争いで、各チームがラストスパートに入る終盤戦になって大宮アルディージャが存在感を示した。 ホームのNACK5スタジアム大宮に首位を快走する柏レイソルを迎えた、2日の明治安田生命J2リーグ第39節。開始わずか3分で先制を許したアルディージャだったが、前半終了間際に連続ゴールを決めて逆転。後半に繰り広げられた柏の猛攻を、ピッチ上の全員が一丸となってはね返し続けた。 勝てばJ1昇格へ王手をかけていたレイソルを退けたアルディージャは、逆にレイソルに勝ち点6ポイント差の暫定2位に浮上。アルディージャは消化試合数がひとつ少ないため、残り4試合となったJ2戦戦でJ1への自動昇格となる2位以内だけでなく、逆転優勝をも狙える位置につけた。 今シーズンで3番目の入りとなった、1万1687人で埋まったスタンドを熱狂させた前半42分の同点ゴールは、狙いを定めたボール奪取からわずか5秒後に生まれた。敵陣のほぼ中央で、レイソルの守護神・中村航輔からボランチの手塚康平へ縦パスが入った瞬間だった。 「手塚選手からは僕の姿が見えていないと思ったので。あのような形で奪いにいきたいと考えていたので、ちょうどタイミングが合った感じです」 控え目な口調ながらも、狙い通りだったと試合後に振り返ったのはボランチの石川俊輝だ。中村の方を向いていた手塚の背後、ちょうど死角になる位置からプレッシャーをかけて自由を奪う。手塚のプレースタイルを読み切ったうえで、石川は次の展開をも予測して左足を伸ばした。 「左利きの選手なので、おそらく彼の左側でボールをもつだろう、と。それで逆にいかれたら仕方がないと、あの場面では割り切っていました」
逆転ゴールは古巣にカムバックしてきた茨田陽生
予想通りに手塚は左足でボールを持った。何とか味方へパスを出そうとした矢先に、石川の左足に当たってこぼれたボールをMF奥抜侃志が拾い、すかさずドリブルでペナルティーエリア内へ侵入する。飛び出してきた中村をも巧みにかわし、無人のゴールへ強烈な意一撃を突き刺した。 余韻が残っていた2分後には逆転ゴールが生まれる。ペナルティーエリア内の左サイドへ侵入した奥抜が、飛び出してきた中村の頭越しに、右足のアウトサイドでループ気味のシュートを放つ。枠には入らなかったボールが転がっていたファーサイドに、アルディージャの選手2人が詰めていった。 その一人、長い距離を走ってきた右ウイングバックのイッペイ・シノヅカが、ゴールラインぎりぎりでボールに追いつく。もう一人のMF茨田陽生はシノヅカの姿を視認した瞬間にあえてスピードを緩めて、さらにバックステップを踏んで自身の前にスペースを作り出した。 「イッペイ、頼む、オレにボールをくれと思っていたら、しっかりとリターンしてくれた。(中村)航輔に触れられてヤバいと思ったんですけど、そのまま逆サイドのネットに入ってくれてよかったです」 執念で戻ってきた元日本代表の中村が、ダイブしながらシュートに触れるも防ぎ切れない。小学生からレイソルひと筋で心技体を磨き、2010シーズンにはトップチームでデビュー。2017シーズンからはアルディージャへ新天地を求めていた28歳が、古巣への恩返しとなるゴールに笑顔を弾けさせた。 2017シーズンのJ1で最下位に沈み、2度目のJ2降格を喫したアルディージャは昨シーズン、1年でのJ1復帰を掲げて一敗地にまみれている。J2リーグで5位に入るも、J1参入プレーオフ1回戦で、退場者を出して10人になった6位の東京ヴェルディに0-1で屈した。