相次ぐストーカー、被害者保護に限界 加害者への更正プログラム義務付けなど法整備急務
栗原さんは「変えられるのは自分の思考と行為。自分を変えることに焦点を当てる必要がある」とする。理論的に学ぶことで納得する人は多く、これまで約2千人が受講したが8~9割が更生しているという。
それでも、プログラムに参加するのは加害者のごく一部に過ぎない。海外では米国やカナダの一部の州で、裁判所がストーカーにカウンセリングや治療を義務付ける命令を出すことができる。
これを踏まえ栗原さんは「日本でも加害者に強制的にプログラムを受けさせる法整備が必要だ」と指摘する。その上で「法整備が難しいなら、警察と連携してプログラムを実施しているNPOなどに加害者をつなげる仕組みの構築を急ぐべきだ」と訴えた。
■ストーカー相談件数高止まり
警察当局もストーカー行為への対策を強化しており、昨年のストーカー規制法に基づく「禁止命令等」は1963件で最多を更新した。ただ、中には一定期間、加害者からの接近がなく、被害者側が警察の対処を望まないケースでも事件に発展しており、より一層の対応が迫られている。
警察庁によると、ストーカーの相談件数は令和元年は2万912件に上った。2~4年も2万件前後、5年が1万9843件と推移し、高止まりの状態。ストーカー規制法違反での摘発件数も増加傾向にある。
今年5月には、東京都新宿区のマンション敷地内で、住人の20代女性が経営する店の客の男に刺殺される事件が発生。男は過去にストーカー規制法に基づき警告を受け、逮捕もされていた。ただ、その後は被害者に接近することはなく、警視庁は対応を終結していた。
ストーカー規制法は、平成11年に埼玉県桶川市で女子大生が刺殺された事件を契機に制定。メールや交流サイト(SNS)を規制対象に加えるなど、改正が繰り返されてきたが、効果が十分に出ているとは言い難いのが現状だ。(前原彩希)
■重罪という意識、浸透せず 常磐大元学長・諸沢英道氏(刑事法)
技術進化に伴い、いたちごっこのように法改正が行われてきたのがストーカー規制法の現状だ。根本的に法の建て付けの悪さだと言っていい。