「やっぱり娘がいいのよ」歩けなくなった母の本音、「介護のきょうだい格差」の原因
2019年にSNSで、『歳を取るのは怖くない。それは娘が介護士だから─』というコピーの広告が炎上したことがあった。 【マンガを読む】親の介護、家業、夫の世話まで…「自分の時間」がなかった50代女性 「取材中、この広告や今放映されている帯状疱疹のCMの“娘がいてよかった圧”に、違和感を覚える女性がとても多かった。娘というよりも“介護の担い手”と思われているな、と感じてしまうのです。 うちの母も介護前は口に毒があって嫌なことしか言わない人でしたが、自分の体調が悪くなってからは、『娘がいてくれてよかった』が口癖になっています。兄(51歳)には一切そういう言葉は使わないんですよね……。私にだけ言うのはなぜなのか……。言われるたびに足かせをはめられたような気持ちになります」というのは、編集者でライターの佐々木美和さん(47歳)だ。 厚生労働省の「国民生活基礎調査の概況」2022(令和4)年によると、介護者の担い手は介護者と同居で女性68.9%・男性31.1%、介護者と別居で女性71.1%・男性26.0%となっている。内訳は配偶者や子どもや子どもの配偶者なのだが、介護者と同居・別居問わず、男性に比べて女性が圧倒的に多い。もちろん、男性でも介護の担い手になっている方はいるが、いわゆる妻や娘、息子の嫁や孫娘が担っているケースが多いことはデータからもよくわかる。 前編では佐々木さんの母親の突然始まった介護と、「介護のきょうだい格差」が少しずつ始まる様子をお伝えした。後編では、きょうだい格差が本格化していく様子をお伝えする。
母は寝たきりになってしまうのか?
急な激痛に襲われ、歩けなくなってしまった母。病院では『急速破壊型股関節症』と診断された。急速に股関節の骨の破壊が進んでしまう病気だ。母が住む地元の病院では「年齢的に手術は無理なので、手立てがない」と言われた。寝たきりになると言われ絶望する母……。今後の介護を考え、私も途方に暮れた。何をしなくちゃいけないのか? まずは、明日早々にケアマネージャーさんに連絡をしなくては……、と気持ちが焦る。 でも、本当に手術はできないのだろうか? という思いがよぎる。地元の病院はあまりいい印象が持てなかった。母の病名について検索をしてみると様々な情報が入手できた。高齢者でも手術をしている人もいる。股関節の人工関節手術は頻繁に行なわれているものだとわかった。高齢者でも術後歩行可能な人たちがいることもわかった。しかし、ネットに出ている名医といわれる人がいる病院は、受診に3ヵ月待ち、半年待ちと口コミに記してあった。 「そんなに待っていたら、母は完全に寝たきりになってしまう……」 他に病院に専門の病院はないものか、と検索していると、灯台もと暗し……自分が婦人科系で通っている少し大きなA病院の整形外科に「股関節外来」があることわかった。股関節にどれだけ詳しい医師がいるかわからないが、行きやすい病院ということで、早速翌週で予約を取り外来を尋ねてみることにした。 ここから「母の通院」地獄が始まるのだ。