「日本の酪農家、1万戸割れ」の背景に年間330日労働&赤字? 解決策は?
「日本の酪農家、1万戸割れ」 一般社団法人中央酪農会議の集計によると、指定団体で受託している全国の酪農家の戸数は9960戸と、初めて1万戸を割った。 【映像】下がりすぎ? 酪農家の年収の推移 2019年からの推移を見てみると、この5年だけで3000戸以上減っている。農業経済学が専門の北海道大学大学院の小林国之准教授は「円安や原油高によるエサや燃料代の高騰が全国的な離農に拍車をかけている」と話す。
酪農家は土日も休めない?
「2021年には酪農家の全国平均所得は736万円程度あったが、2022年にはマイナス50万円程度に減少しており、赤字のところも少なくない」 帝国データバンクの調査では、牛乳やチーズなどの原料となる生乳生産を行う酪農業の倒産が3年連続で増加となる見込みで、過去10年で最多を更新するとみられている。 こうした経営の厳しさによって深刻化しているのが「酪農家の休日取得」。生き物の世話をしているからこそ、土日祝日を含めて休みを取得することが困難なのだ。そんな中、酪農家が一息つくための存在として手助けを行うのが「酪農ヘルパー」だ。
酪農家に休んでもらうための救世主とは
民間酪農ヘルパー会社 ファム・エイ 長渕豊代表取締役は「農家の人は本当に休むことができない。北海道の場合、年間で24、25日しか休めてないのが現状だ」と説明する。 北海道の中標津町を拠点に、およそ440戸でヘルパー業務を行うファム・エイ。社員の半数が20代の若手で、入社2年目の引地楓菜さんもその1人だ。 「エサをあげて、エサを作って、牛乳を絞って、あとは分娩。力仕事もあれば、簡単な仕事もある」(引地さん) 現場によって仕事内容や方法が異なるため戸惑うことは多いものの、その分得られる知識や経験は多いと引地さんは話す。しかし現在、酪農ヘルパーの人数は全国で合計1454人。去年から38人減少している。 長渕代表取締役は「人口減少という問題があるため我々は東京・大阪・福岡などに出向いて人材を確保するために日夜奔走している。給料をある程度支払わなければ、なかなかやり手が見つからないため、1日1人2万8千円に改定した」と実情を語る。 ファム・エイでは、酪農家の高齢化対策として「コントラクターなどの大型機による収穫作業を作業受委託」を確立しているというが円安によるエネルギー価格の高騰により単価を上げざると得ないという。
酪農家に本当に必要な支援とは
危機的な状況を乗り切るためにどのような支援が望まれているのか? 小林准教授によりますと、短期的には「無事に年越しをするために、現状の給付金以外にも借り入れが多い酪農家への資金的な支援や返済スケジュール猶予・エサ代の支援が必要」だという。 中長期的な支援としては、小林教授は「輸入しているエサを国産への切り替え」「国産の生乳の価値をより伝える努力や市場作り」が必要だとした。ファム・エイの長渕代表取締役は「利用料金・人材派遣会社の手数料の補助」「技能実習生のビザ緩和・免許取得の支援が必要」だと指摘した。 (『ABEMAヒルズ』より)
ABEMA TIMES編集部