電気代は3月と6月で月々“約1200円”の差が…値上げで電力株は買いなのか?(児玉一希)
いまの電力株上昇は限定的
電気代の値上げは、個人消費にとって確実にマイナスの影響です。東京電力の標準料金の試算では、3月と6月を比較すると、月々約1200円の差があります。猛暑が続けば消費電力が1.5倍になることもあり、個人消費の負担は間違いなく増えるでしょう。これから訪れる猛暑の時期に電気代を削減することは難しいですから、消費が鈍るなどの悪影響が生じる可能性があります。 4月に電気・ガス全社値上げ&5月末で補助金廃止…年間4.5万円負担増を埋める「ポータブル電源」の威力 今回の値上げは、政府による電気代の補助金が終了したためで電力会社の収益体制自体は変わっていません。株価が上がるのは通常、企業利益が増加した場合ですが、今回の値上げはそれとは異なります。むしろ、円安や資源高により火力発電の原材料コストが上がることもあり得ますから、その状況を踏まえると電力株が買いとはいえません。 ただ一方で、電力株の株価指標を見ると、PBR(株価純資産倍率)が1倍にはるかに届かない銘柄も多く存在します。このような割安な銘柄に対して、海外の投資家から「割安株」として買われる可能性があります。しかしこれはあくまで割安さゆえの買いだと理解しておくべきです。
今年注目の節電株とは?
現在、電力株が上昇しているのは、相場の格言「噂で買って事実で売る」の典型的な例だと思います。北海道電力や九州電力のように新たな半導体工場の建設やデーターセンター増設に伴う電力需要の急拡大が予想されていますが、実際にどの程度電力を消費するかはまだ不明です。そのため期待や思惑で先回りして買われている部分があります。しかし建設が一巡すると、電力株の上昇余地は限られるかもしれません。 節電関連で分かりやすい例としては、空調機大手のダイキン工業(6367)や、LED照明の製造で注目され多くの自治体にも導入されているミネベアミツミ(6479)が挙げられます。しかし、この2社は企業規模が大きく海外売上の割合も大きいので、今回の電気料金の値上げが業績に与える影響は軽微でしょう。 そうなると電気代値上げの余波を狙って、例えば消費控えの周辺銘柄が興味深いかもしれません。100均のセリア(2782)や九州の小売企業であるトライアル(141A)は、電力料金や光熱費の上昇で業績にマイナスの影響を受けるかもしれませんが、ディスカウントや安い商品を求める消費者需要は依然として根強いため、顧客需要は継続的に見込めそうです。 もしも円高に転じた場合は、光熱費の上昇が抑えられやすくなりますし、輸入材料の価格高騰も一旦落ち着く可能性があります。その結果セリアやトライアルのような企業にはプラスの影響に転じます。 異常気象による不作で、食料品を中心に値上げの余波はあるかもしれません。ただし、物価上昇率自体は前年より鈍化していくのではないでしょうか。2022年~23年にかけては、急速な円安やウクライナ戦争による原油価格の急騰などの“異常要因”が多くありましたが、2024年は比べると異常要因が少ない。円安が多少進んではいますが、下落幅は限定的で原油価格も22年のように極端な高騰は見られません。 ■決算から読み取る日本株の見通し 日本企業の多くは決算が保守的です。期首では想定為替レートを140円や130円といった水準で設定されることが多く、景気回復や円安により、後の上方修正を期待する思惑があるようです。 自動車や機械メーカーなどで海外での減産や販売数量の減少が決算で見られる一方で、景気の減速、コロナ禍での余剰資金による自動車購入や半導体ブームによる前倒しの設備投資が一旦一巡して今後の伸びが不透明な状況。日経平均としても割と軟調な展開を予想しています。 (児玉一希/株式会社RES 代表取締役)