「やっぱり一つのチャレンジだった」中山美穂さん、95年「Love Letter」報知映画賞主演女優賞で本格派女優へ
女優で歌手の中山美穂さんが6日、都内の自宅で死去した。54歳だった。中山さんはこの日夜、大阪市内でコンサートを行う予定で、警視庁渋谷署によると、朝に都内の待ち合わせ場所に来なかったため、事務所関係者が知人と自宅を訪問。浴室で倒れているところを発見された。所属事務所は「死因などの詳細は現在確認中です」とコメント。アイドル、女優としてトップを走り続けた中山さんの死に、日本中に衝撃が走った。 【写真】12月5日に最後のインスタ投稿「心がえぐられて」 アイドルとして一世を風靡(ふうび)した中山さんが、本格派女優としての扉を開けたのは、1995年の映画「Love Letter」(岩井俊二監督)だった。あてのない手紙から始まる、雪の舞う北海道・小樽と神戸を舞台にしたラブストーリーで、中山さんは婚約者を亡くした主人公・博子と、婚約者と同姓同名の樹の一人二役を演じた。 降りしきる雪の中で、博子が「お元気ですか? 私は元気です」と叫ぶように呼びかけるクライマックスは邦画屈指の名シーンと呼ばれた。岩井監督の繊細な演出で、アイドル女優としての壁を破った中山さんは、報知映画賞をはじめ、同年の映画賞レースの主演女優賞を席巻。中国や韓国でも絶大な人気を誇り、海外のファンが“聖地巡礼”として小樽を訪れるなど、今もなお語り継がれている。 スポーツ報知のインタビューに、中山さんは「Love Letter」のオファーを受けた時のことに触れ、「やっぱり一つのチャレンジだった。『Love Letter』を引き受けるには、他のことを諦めなければならないとか、決断をしなければいけない状況だったんです」と回想した。「私自身、ものすごく疲れていたし、忙しかったし『やるかやらないか』っていう決断をするのにすごく時間がかかったし、考えた。なので、決断してからは必死でした」と、退路を断って臨んだという。 「それまでやってきたことと全然違うことをやらないといけない」と振り返るように、気鋭の岩井監督とのものづくりは新鮮な作業だった。報知映画賞の表彰式では、主演女優賞を受賞し「デビューして10年間は『Love Letter』のスクリーンにたどり着くための長い長い旅でした」とスピーチするほど、人生を変えた作品だった。 中山さんは、20年公開の「ラストレター」に出演し、25年ぶりに岩井監督作品に帰還。「Love Letter」で共演した豊川悦司との再共演で、映画ファンの胸を熱くさせた。
報知新聞社