【大学受験】図書館に6時間こもって入試 受験生は「とても楽しかった」「友達になりたい子に出会えた」
大学入試では総合型選抜や学校推薦型選抜といった「年内入試」が広がり、今や大学入学者の半数以上がこの入試を利用しています。大学が自分たちの求める学生をより確実に選抜しようとする動きが強まることで、その選考内容も多様化。受験者同士の討論の様子や、課題教材への理解度が評価されるなど、入試を受けることそのものが学びにつながる試験も出てきています。 【写真】入試で使用される図書館を見学する高校生たち(左)。プレゼミナールの文系セミナー(右)
秋ころから動き出す年内入試の特徴は、時期の早さだけではありません。選考内容も多様で、最近は試験に先駆けて様々な事前プログラムを用意している入試も登場しています。例えば、和光大学心理教育学科(子ども教育専修 保育コースなど)の「スクーリング形式入試」の出願条件は、8月中に実施される「スクーリング授業」に参加してレポートを書くことです。そのうえで個人面談によって出願許可を得られた受験生のみ、総合型選抜にエントリーできます。 また、創価大学の「PASCAL入試」は、3月から8月まで、高3生を対象に「チャレンジプログラム」を用意しています。このプログラムでは、事前に予習教材を読んでノートを作成したうえで、話し合い学習法(Learning Through Discussion)というグループワークに取り組みます。プログラムへの参加が出願条件というわけではありませんが、本番に役立つトレーニングであり入学後にも役立つ学習法でもあるので、多くの受験生が参加します。 お茶の水女子大学が2017年度入試から実施している「新フンボルト入試」も、事前プログラムを含む入試の一つです。入試推進室長を務める杉野勇・文教育学部教授は、次のように説明します。 「新フンボルト入試で文系学科を受験する場合は、9月末に行うプレゼミナールの受講が必須です。これが第1次選考となるため、受験生にはセミナー後の60分間でレポートを書いてもらいます。しかし、これだけで合否が決まるわけではありません。プレゼミナールは、受講必須ではない理系学科の受験生や高2生も参加することができ、アカデミックなオープンキャンパスの役割もあります」 第2次選考は、10月の「図書館入試」です。9時半から15時半までの6時間、受験生は大学の図書館から出られません。当日発表されるテーマに沿って、館内の蔵書や資料を活用してレポートを作成します。 23年度・文系の入試問題では「『本物』とは何ですか。自由に論じて下さい」というレポートテーマが出されました。 「1次選考はいわば大学での授業を体験するもので、2次選考は大学生としての研究方法を学ぶもの。新フンボルト入試が目指すのは、『受験することに意義がある入試』です。教員のこの思いが受験生にも伝わるのか、導入以来、約10倍の高倍率を保っています」 この入試に合格して入学した人には一定の傾向がある、と杉野教授は感じています。 「自らどんどんチャレンジする学生や、積極的に意見を表現する学生が多い気がします。これまでの一般選抜の合格者は、真面目で優秀だけれど、おとなしくて、いい考えを持っているのに発言しない学生が多い傾向がありました。そうした控えめな学生たちを、新フンボルト入試の合格者がグイグイ引っ張ってくれる変化が起きています」