昔は“意地悪じじい”だと思ってた「小倉智昭」が意識不明になって…「古市憲寿」が“弔辞”を書いた理由
いや、笑い事ではない。それがあながち冗談にならない可能性もあったのだ。中瀬さん経由でこの本の依頼をした時のことである。小倉さんからはこんな返事があった。 「実は一昨日から血尿が出始めました。小腸で代用した膀胱にがんはできないそうです。腎臓に異変が起こっているかもしれません。やらせてもらうなら急ぎます」 その時は、もしかしたら遺言のような本になるのかと覚悟した。小倉さんもいつもの毒舌を封印して、格好つけた言葉ばかりを残そうとするのかもと思った。 結論から言うと、全然違った。遺言とはほど遠い内容になった。小倉さんは小倉さんだった。いつもの通り、言いたい放題だった。 小倉節全開の本になったと思う。もちろん大病や臨死体験を経た人生論などは非常に興味深いのだが、それだけには留まらない。もはや小倉さんしか語れないだろう芸能界やテレビ業界のあれこれを赤裸々に語ってくれた。 いわゆる「語り下ろし」というスタイルだが、本文を読んでいると頭の中であの小倉さんの声が聞こえてくるはずだ。その意味で、書籍版「とくダネ!」と言ってもいいかも知れない。とは言っても、もはや現在の地上波ではオンエアできない内容も多い。YouTubeでさえBAN(バン)される箇所がありそうだ。 痛快で、愉快で、いつの間にか背中を押されている。そんな風に、小倉さんの過激さと優しさが混ざった一冊になった。小倉さん、これが本当の遺言になったら困るので、しばらくは元気でいて下さい。 小倉智昭(おぐら・ともあき) 1947(昭和22)年秋田県生まれ。タレント。テレビ東京を経てフリーに。『どうーなってるの? !』『情報プレゼンター とくダネ!』などのMCとして活躍。 古市憲寿(ふるいち・のりとし) 1985(昭和60)年東京都生まれ。社会学者、作家。『ヒノマル』『正義の味方が苦手です』『謎とき 世界の宗教・神話』など、著作多数。 協力:新潮社 Book Bang編集部 Book Bang編集部 新潮社
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