核廃絶を訴えて70年、ノーベル平和賞候補にも名前が挙がる団体が立つ岐路 今後の活動どうなる、取材で見えてきたそれぞれの判断
被爆地の広島県や長崎県から離れた静岡県で、被爆者手帳を持つのは、342人(2024年3月末時点)。平均年齢は84・64歳で、85歳を超える全国平均同様に高齢化が進む。被爆者の子どもである2世も若くはなく、担い手不足はどこも共通する課題だ。 そんな中で静岡県では、会長以外の全役員を2世が占める。元副会長で現在は事務局補佐の高野佳実さん(69)は、積極的に反核運動を進める1人。父は広島県で被爆し、1982年から亡くなるまでの16年もの間、副会長を務めた。精力的な運動により、県に2世への医療費支援を手厚くさせることにも成功。父らが残してくれた功績を守り広げるべく、高野さんは今も会の運営に携わる。 被爆者らが残した証言を理解し、勉強し、分かりやすく核兵器や戦争の恐ろしさを伝えたいと考える。「本当の怖さを若い世代に話して伝え、『核兵器廃絶』という文字だけでなく、心を打って行動につなげたい」と未来を描く。 ▽いつまで活動を続けられるのか、アンケート結果は
共同通信は今夏、全国の36団体に「会の運営に2世や被爆者以外が関わっているか」を尋ねるアンケートを行った。その結果、29団体が「関わっている」と回答。かつては被爆者主体だった組織運営が変化していることが明らかになった。 一方で、今後の活動継続の見通しについては「10年以上活動できる」としたのは6団体にとどまった。 16団体が今後の活動について「5年はできる」や「3年はできる」を選択。うち13団体は運営に2世らが関わっているとしたが、団体を引き継いだ2世自身の高齢化に加え会員数の伸び悩みなどにより活動の担い手が先細る恐れがあるとした。継続的な組織運営には依然悩みがあるようだ。 ▽「誇りを持って組織をたたむ」「国の覚悟が問われる」専門家の見方 京都大の直野章子(あきこ)教授は「組織ではなく、運動を継承するべきだ」と語る。 直野教授は、被爆者団体という組織を「同じ境遇の被爆者がともに支え合う場であり、再び被爆者を作らないよう活動する場だった」と表現する。その当事者がいなくなった時は「ヒロシマ・ナガサキを繰り返さなかったことを誇りに組織をたたみ」、そして「被爆者の思いを市民や他の団体が引き継いでいく」ことが重要だ、という主張だ。