BMWがピアニスト反田恭平氏とタッグ。世界的メーカーの顧客ロイヤルティ獲得戦略とは
ラグジュアリーブランドへの成長を期待
BMWでは、2021年より反田氏をブランド・フレンドに迎えている。なぜ反田氏に白羽の矢を立てたのか。そこには反田氏の生き様に共鳴したBMWの思いがある。
「BMWではブランドを次世代に継承していく取り組みとして、“ネクストジェネレーション”をキーワードに掲げており、固定観念に捉われずに挑戦する次世代を応援したい思いがあります。そのなかで、反田さんはピアニストに留まらず、指揮を学んだりJNOを創設したりと、多角的に挑戦し続けるパイオニア精神をお持ちです。その姿がBMWの思想と共鳴するためお声かけしました」
こうしたカルチャーマーケティングを行う理由は、スポーティーなイメージが先行するBMWを、ラグジュアリーブランドへと成長させるためでもある。クラシック音楽をはじめ、アートやゴルフなど、富裕層が嗜む領域にアプローチすることで「BMW=ラグジュアリー」と印象づけたい狙いがあるという。
目的を忘れず、継続的に行うマーケティングの重要性
井上氏はBMWに入社する前は広告代理店に勤務し、消費財メーカーを担当。海外勤務も経験するなかで制作の現場からもマーケティングに従事してきた人物だ。井上氏はどのような思いでマーケティングと向き合っているのだろうか。
「マーケティングならば何でもできるタイプの人もいますが、私は自分が好きで思い入れのあるブランドしか携われません。母がずっとBMWに乗っていて、私が最初に運転したクルマもBMWでした。代理店時代も、自分が好きなスキンケアブランドを担当していたんです。興味のある分野や愛着のあるブランドに関わりたい。生きていくなかで接点があるからこそ、情熱を持って取り組めていると思います」
また、井上氏は「目的を見失わないようにしたい。“木をみて森を見ず”のようなことはしたくない」と加えた。BMWでいえば、ラグジュアリーブランドへと成長させる目的、そして“駆けぬける歓び”というコアなメッセージを忘れないように心がけているという。