すみれ「産後うつの最中に聞いた母・松原千明の死を乗り越えて。夢を追いかけることが、天国の母への親孝行」
◆メンタルヘルスの重要性を感じた ミュージカルの舞台に立ちたいという夢を抱くようになった私は、アメリカ本土のカーネギーメロン大学の演劇科に進みました。母と、まだ中学生のオリバーと離れて暮らすのは心配だったけれど、自分の夢は諦めたくなかったし、11年からは本格的に日本で芸能活動をするようになりました。 オリバーとは頻繁に連絡をとっていましたが、私が家を出てからが一番大変だったと聞いたのは、最近のことです。「ママが体調を崩すと、僕は学校に行けなかった」とも。どんなにつらかっただろう、とすごく心が痛みました。 日本人はメンタルヘルスについて相談することに、とても抵抗がありますよね。母もそうだったのかもしれません。カウンセリングには通っていたけれど、たぶん強がって、包み隠さずカウンセラーの先生に話していなかったんじゃないかと思うんです。 母は、人に迷惑をかけたくない、自分の力で解決したい、という気持ちの強い人でした。本当のところは私にも本心を見せていなかったと思うし、女優という職業だから、よけいに弱みを見せないようにしてた。 1999年には『リ・ボーン―ハワイの光のなかで』という本を出したりしたので、「ハワイに移住したことで、ハッピーに暮らしています」といったイメージを崩すと、みなさんを裏切ることになるというプレッシャーもあったのかもしれません。
メンタルヘルスの重要性を改めて感じた出来事でしたが、実は私は少し前から、友人たちとメンタルヘルスをサポートするプロジェクト「ALL FOUR ONE PROJECT」を始めています。もっとメンタルヘルスについて気軽に話そうよ、という活動です。 一緒に活動している友人は、コロナウイルスに感染したとき、孤独感に襲われて精神的に参ってしまったそうです。私は産後、はじめての子育てが思うようにできなくて、「ちゃんとしたママになれるんだろうか」と不安になって、立ち上がれない時期がありました。 海外では、カウンセリングは精神的に落ち込んだ人が行く特別なところではなくて、普段元気な人がよりハッピーな気持ちになるために通うところなんです。そういうことをもっと日本に広めたいと思っています。 芸能界でも、メンタルで疲れてしまってお仕事をお休みする人が増えてきましたよね。私にも同じ経験があります。父や母のことがあるので、もともと「いい子にならなきゃ」という気持ちを強く持ってきたし、お仕事をするときには「ハワイからきた明るい子」というイメージを壊さないようにしよう。そんな意識もありました。 イメージを大切にして、本当の理由を隠すのは日本らしい文化だと思うけれど、心の調子がよくないときって、外でよけいにハッピーに振る舞って、その分疲れちゃうことってあるじゃないですか。これからは調子が悪いことも気軽にオープンにできるような世の中になるといいな、と思っています。