『わが家に地獄がやって来た』

家族関係に友人や同僚とのお付き合い、子育ての悩み、仕事のトラブルなどなど…。頭を悩ませている人は多いですよね。そんなモヤモヤを笑い飛ばせたら、毎日が楽しくなると思いませんか？ 【漫画を読む】『わが家に地獄がやって来た』を最初から読む そんな人にぜひ読んでほしいのが、漫画『わが家に地獄がやって来た』。著者は『夫の扶養からぬけだしたい』『犯人は私だけが知っている』などで知られる、ゆむいさんです。平凡な主婦に次から次へとトラブルが襲いかかる怒涛のエピソードが、コミカルかつポジティブに描かれています。読めば、気持ちが明るくなること間違いなし！ 今回は、ゆむいさんに作品に込められた思いをお聞きしました。 ■義実家を舞台に繰り広げられる、波乱の日々 物語の舞台は、東京郊外の商店街にたたずむ小さな居酒屋さん。ここは、主人公・ユキエの義実家です。 夫・サトルの強い希望で、マイホーム購入のための資金を貯めるべく、義両親が営む居酒屋を手伝うことを条件に2階の一室に居候中。第一子の出産を間近に控え、大きなお腹を抱えて働いていました。ストレスの多い義両親との同居、酔っ払った常連客のセクハラに耐えるユキエ。 さらには、唯一の救いだと思っていた夫も大きな子どもに成り下がり、2人で暮らしていたときの頼もしかった姿はどこへやら。誰もユキエの味方がいないという地獄…。 そんなある日、海外赴任中のはずだった義兄とその彼女がやってきます。突然、ここに住むと言い出して…。 モラハラ、女性問題、金銭トラブルetc. それは、これから襲いかかるさらなる地獄の始まりに過ぎなかった！？ ■孤軍奮闘した自身の恨みや苦労を、主人公・ユキエに投影 ――ゆむいさんの作品は、悩みながらも目の前の問題に立ち向かってゆく女性主人公の姿が印象的です。コミカルな展開ではありますが、本作もそのような女性の葛藤がテーマの一つにあると思います。主人公・ユキエを描くうえで意識したこと、大切にしたことはありますか？ ゆむいさん：実家の両親の価値観が古すぎて家庭内の相談ができない、というのはまさに私のことです（笑）。母は戦時中に生まれた人で、父は団塊の世代ど真ん中かつ新しいことを取り入れられない性格なので、全く相談相手になってくれません。それ故、孤軍奮闘しなきゃいけない場面が多々あって、その時の恨みや苦労をユキエに投影しました。 そういった経験から、これは自分のことに限りますが、「折れなければ絶対に自分が望む未来に近づける！」という信条が私の中にあります。本作のような希望を示唆する終わり方って、漫画としては投げやり感があるように捉えられてしまうかもしれませんが、私はリアルではそういうものだよなと思っています。 ――夫・サトルをはじめ、とんでもない兄夫婦や個性的な常連さんなど、クセが強く個性豊かなキャラクターが登場しますね。これだけ多くのキャラクター設定をどのように考えたのでしょうか？ ゆむいさん：キャラ作りは、いつも私の周りにいる人を参考にしています！ 愉快な人たちに囲まれて毎日楽しいです！ （白目） 多くのキャラクターがいたからこそ、別々に登場した人物が後から意外な形で繋がって発展していく過程は描いていて楽しかったです。 ――たくさん登場するキャラクターの中で、ゆむいさんのお気に入りの登場人物は誰ですか？ ゆむいさん：マサルとルナの義兄夫婦がお気に入りです。二人とも天然すぎて、描いていてほっこりします。だけどルナは超ハイスペな学歴を隠しているし、マサルはどこまでもただの天然だけど思いやりはある人なので、嫌いになれないキャラとして描きました。実際にいますよね、そういう人。 ■トラブルを人生の糧にして楽しむ過程を体験してほしい ――古い価値観をもつ義両親＆両親へのストレス、セクハラにモラハラ、金銭問題、SNSによるトラブルなどなど、作中では本当にさまざまな問題が起こりますね。現代の暮らしの中で、誰にでも起こる可能性のある問題が多数描かれていると思いました。そこには、ゆむいさんのどのような思いが込められているのでしょうか？ ゆむいさん：ただ普通に生活しているだけなのにトラブルがホイホイ舞い込んでくる、そういう世の中のような気がします。でもトラブルが起こるたびに「法律ってこうなってるのか～」とか、「この人って実はこういう人だったんだ！？」といつも新しい発見があります。すべての胸糞エピソードが人生の糧になっていくのが私は面白いなと思っているので、もりもり盛り込むことで、読者さん達が漫画の中で追体験できたら面白そうだなと思いました。 ――実際に、作中に出てくるような問題に悩まされている読者も多いと思います。読者からの反応はいかがですか？ ゆむいさん：トラブル系の話は結構聞きます。みなさんSNSでは表立って書けないような、かなり深刻な問題も多いんですよね。プライバシーの問題もありますし、私でもリアルタイムでは絶対に呟けないです。なので、ここでもそういった具体的な反応は答えられないのですが、「いつか自分のトラブル体験を漫画にしてほしい」というお話はたくさんいただきました。 ＊　　　　　　＊　　　　　　＊ トラブルだらけの日々が続くと、気分が沈み、心も身体も疲弊してしまうものですよね。けれど、『わが家に地獄がやって来た』の主人公・ユキエは、時には怒り、落ち込みながらも、常に前を向いて生きているのが印象的です。これは、「トラブルも人生の糧になる」という、ゆむいさんの思いがあってこそなのですね。落ち込んでどうしようもないとき、これからどうしようとお先真っ暗なとき…そんな気持ちをふきとばしてくれそうな作品です。 取材・文＝松田支信