巨大メーカーのフォードとVWが共に苦戦! 巷で言われる「BEVのつまづき」じゃない根深い原因とは?
そもそも使いやすいクルマを用意できていないフォードとVW
あくまで筆者の私見になるかもしれないが、フォードとVWに共通しているのは、コネクテッドシステムの使いにくさというものもある。 筆者は南カリフォルニアでレンタカーを借りる機会がある際は、最近はシボレーブランド車をよく借りていた。アメリカなので取扱説明書を見ても英語でよく理解できず、とりあえずスマホをブルートゥースでつなぐなどの操作を直感(こうすればいいかなと探りを入れて操作する)で行う。 シボレー車ではそんなに手こずることなく操作ができる。計器盤はアナログでセンターに小さいディスプレイがあり、そこにいろいろな情報表示ができることになる。 筆者はオドメーターではなく、トリップメーターを表示させて運転するようにしている。ツイントリップメーターなのでトリップAを毎日リセットしてその日の走行距離を、トリップBでは借りている間の累計走行距離を表示すことができるようにしている。ステアリングにあるボタンで操作するのだが、トリップ表示以外の操作についても、階層がそれほど深いこともなく、走行中でもブラインドタッチで表示切り替えが容易となっている。 2024年秋にはシボレー車の次にフォード車を借りたのだが、シボレーと比べるとその操作の複雑さが目立っていた。つまり、使いにくいのである。ブルートゥースをつなぐだけでも手こずることとなった。計器盤はフルデジタルタイプでステアリングリモコンで表示切り替えを行うのだが、操作が複雑で何段階か階層を進んで操作しないとトリップ表示に行きつくことすらできなかった。 インパネセンター部のディスプレイでは、運転中に音楽を聞いているときに何曲か曲を飛ばしていたら突然画面がフリーズしてしまい操作不能となってしまった。慌ててフリーウェイを降りて、エンジンを再始動したら再び動き出した。細かいことは省くが、シボレーと比べると操作が複雑でわかりにくく信頼性にも疑問符がつく印象を強く持った。 VW車でも、ディスプレイオーディオを含め、操作系全般のヒューマンインターフェースがあまりよくないと、筆者だけではなく試乗した多くの人から異口同音に聞くことができた。 フォードはベルトコンベアを活用した量産体制をいち早く確立させ、自動車の量産化について先駆者として名をはせてきた。VWも、ビートルをはじめ廉価ながら高品質な大衆車を数多く世界で販売してきたメーカーだ。しかし、長年世界に良質で廉価な自動車を供給してきただけに、最近の目まぐるしい自動車業界の変化の波に乗り切れていないことが、今日の苦戦傾向を生んでしまったものと筆者は考えている。 メディアでは単に「BEVでつまずいた」といったニュアンスの報道が目立つが、問題はもっと根深いところにあるのではないか。それはこの2ブランド以外でも長い間自動車業界を引っ張ってきた欧米そして日本の多くのメーカーも同様であって、それを解決しプロダクトに反映しているのである。ただ、フォードやVWはその解決策を見誤り、対応に出遅れてしまったことが、現在の状況を招いているのではないかと考えている。
小林敦志