始まりはストリートビューに映り込んだ除草剤容器 ビッグモーターの「街路樹問題」 木はどうやって枯死させられた?有識者や専門家の答えは
自治体の動きは早かった。会見から一夜明けた26日朝、埼玉県が所沢店に聞き取りを申し入れた。店の前にあった低木は消え、土だけになっていたからだ。東京都や神奈川県なども続き、全国の店舗周辺で過去に街路樹が不自然に枯れ、消失していたことが明らかになっていく。 国土交通省も全国の地方整備局に調査を指示し、社会の耳目は一気に「街路樹問題」に集まった。 会見での釈明とは異なる実態に、世間の批判は高まった。するとビッグモーターは会見からわずか3日後、公式サイト上で陳謝。過去に店舗清掃で除草剤を使い「(その)影響により枯れた可能性が高い」と説明した。「環境整備点検」と呼ばれる店舗巡回が背景にあったとみられ、この際に、上層部が現場に環境美化を強く迫っていたとの指摘もある。こうした圧力が、過剰な行為につながったのだろうか。 枯死が確認された土壌から除草剤成分が検出されると、器物損壊の疑いで被害届を出す自治体が続出した。国交省も北陸や中四国などの7県9店舗前に関し、被害届を提出すると発表。損害賠償請求も予定する。
さいたま市も被害届を出した自治体の一つ。浦和美園店では除草剤成分「グリホサート」が検出され、複数のケヤキが枯れた。 安全のため伐採したさいたま市は、2022年6月までの1年間に何者かがまいたとして、県警に被害届を提出。店長は「雑草で見栄えが悪いから使用した」と、下草への月1回程度の散布を認めた。散布の時期は、枯れた時期と重なっている。 他にも、春日店(福岡県春日市)では、近隣の最大556倍に相当する濃度のグリホサートが検出されたというから驚きだ。 ホームセンターなどで手に入る除草剤の中にグリホサートが含まれる製品もある。海外では人体への危険性も指摘された成分だ。一見すると、このグリホサートが直接木を枯らしたように思えるが、実際にはどう影響したのだろうか。 ▽「ドリルで穴をあければ」、「植えられている環境による」 まずは農薬の登録審査を行う農林水産省所管の独立行政法人「農林水産消費安全技術センター」を取材した。農薬検査部の佐々木千潮課長によると、グリホサートを含む除草剤は「茎葉処理型」と呼ばれ、植物の茎や葉に直接かけることで作用するのが特徴。土にまかれたグリホサートは速やかに分解され、植物への効能は薄い。