始まりはストリートビューに映り込んだ除草剤容器 ビッグモーターの「街路樹問題」 木はどうやって枯死させられた?有識者や専門家の答えは
佐々木さんも「街路樹を枯らす」という農薬試験は聞いたことがないという。その前提で除草剤の影響を聞くと、「木にダメージはあっても、『普通に』まくだけでは枯死しないのでは」と分析してみせた。 では、普通ではないまき方とは何だろうか―。佐々木さんはそんな質問に対して、ドリルで木に穴を空けて原液を流し込む方法を例示。「ここまで意図的に弱らせればあり得るかもしれないが…」 一方、東京農業大の濱野周泰客員教授(造園樹木学)は「グリホサートだけで樹木が枯れるとは思えない」と述べた上で、条件次第で枯れる可能性を示した。道路沿いで根が張りづらく、ストレスがかかる悪環境下であれば「土への散布で枯れる可能性は低くない」と話す。歩道そばの狭い土地に植えられていた各地のケースと条件は合致する。 神奈川県や静岡県などの一部店舗では、「茎葉処理型」のグリホサートと共に、土にまくことで作用する「土壌処理型」の除草剤成分も出ている。濱野さんは「この種類の成分も含むものを原液に近い高濃度でまけば、特に低木ほど枯れる恐れがある」と解説した。
▽本社を家宅捜索、全国への指示はあったのか 日陰や景観の形成、防火の役割を持つ街路樹は公共物。ビッグモーター幹部は各自治体への謝罪行脚で「本社から散布を指示した記録はない」などと説明したという。ビッグモーターは取材に「社内調査が続いているので、具体的な回答は難しい」などとして、除草剤をまいた詳しい経緯や手法を明らかにしていない。広報担当者は原状回復を優先するとして、調査結果の公表は「検討中」と述べるにとどめた。 警察庁によると、9月26日までに17都県で被害届が出された。各地の警察も実況見分や店舗捜索で散布の実態を調べている。全国で同様の被害が相次いでいることを踏まえれば「会社ぐるみ」に疑いの目が向き、警視庁と神奈川県警が東京都港区にあった本社の捜索に乗り出したのは自然に思える。 ただ、本社への家宅捜索は、樹木の「伐採」という容疑でのもの。川崎店(川崎市)では、本社の「環境整備推進委員」から伐採指示があったことが判明しているが、専門家でも評価が分かれる「除草剤散布」は様相が異なる。
ある警察本部の幹部は散布への捜査について「樹木には個体差がある。除草剤のみが原因と一概には言いにくく、散布の目的などあらゆる側面から調べる必要がある」と話す。 捜査は一筋縄ではいかなそうだ。もし不起訴となれば、枯死した経緯が明らかにならない可能性もある。専門家として長く樹木と向き合ってきた濱野さんは、「捜査で明らかになる前に、ビッグモーターは製品名や散布方法をはっきり説明する社会的責任がある」と何度も強調した。 【動画】ビッグモーター街路樹問題まとめ