Z世代は自己肯定感が低め？ 話題の“ほめちぎる自動車教習所” 「脱輪してもほめて伸ばす」で合格率アップ
ほめちぎることで感動レベルの満足度9割超え
このようにほめちぎることで、生徒たちにはどのような変化が生まれたのでしょうか。 加藤「ほめちぎる教習のいちばんの成果は、『自分は上達している、できている』という自信が芽生えたことです。それによって、『もっとうまくなってほめられたい』という能動的な姿勢も顕著になりました」 その結果、卒業時のアンケートでは、「感動・満足・普通・不満」の4段階で、「感動レベル」と答える生徒が9割以上。Googleマップの口コミも4.7と高評価を得ています。 このような口コミの評判を聞きつけ、全国各地から南部自動車学校の合宿免許に申し込む人が増えています。
社内のほめるスキルを継続させ、さらに向上させる仕組みづくりも行われています。そのひとつが、「スマイルチェッカー」。 教習指導員や社員は出勤するとパソコンに向かって笑顔を見せ、点数で評価されることから1日が始まります。スマイルチェッカーが90点以上にならないと、タイムカードは押せません。 加藤「楽しいから笑うというより、笑っているから楽しくなってくるもの。このスマイルチェッカーを使って表情筋を鍛えることで、笑顔になりやすい仕組みをつくりました」
2つ目の仕組みは、定期的な社内研修でほめ方のスキルアップや成功・失敗体験を共有すること。そして3つ目がISD個性心理学を応用した、誕生日から性格を分類する「バースデイサイエンス」です。 生徒にはそれぞれ自分がどのタイプかを伝えると同時に、教習指導員はそれぞれのタイプに合わせたほめ方を実践。タイプによって、主に性格的な部分をほめる、論理的にほめる、とにかく「さすがだね」とほめる、というような使い分けをしています。
ほめることでZ世代の自己肯定感をアップ
このように、ほめちぎることで若いZ世代の心をつかんだ南部自動車学校ですが、加藤さんはその「ほめるスキル」を若い世代の育成にも役立てたいと考えています。 加藤「今の若い人たちは自己肯定感が低いといわれています。彼らをほめることで『あなたは何でもできるんだよ』と伝えていきたいですね。 それによって自己肯定感を高めて、自分への自信を持ってもらうことが、社会の荒波に負けないチャレンジ精神を育てると思っています」 「ほめちぎる教習所」への問い合わせも全国から寄せられており、すでに4校が研修を経て、「ほめちぎる教習所」として展開。さらに、加藤さんは「ほめちぎるメソッド」や「心理的安全性を高める対話」を中小企業向けに伝えるセミナー活動にも注力していく意向です。 加藤「何かというとハラスメントになってしまう昨今、企業もZ世代を始めとする他者とのコミュニケーションにビクビクしている状態です。そんななか、どのようにほめるコミュニケーションをしたらいいのかを伝えていきたいですね。 特に、上の世代は下の世代に対して、何かとアドバイスをしようとしがちです。しかし、そういう評論家になるのではなく、まずは相手の言葉に耳を傾けること。それによって『この人には何を言っても大丈夫』と思ってもらうことが大切です。 そのためにも常に相手を認めて、その長所をしっかり具体的にほめることを心がけてほしいですね」 社会的キーワードでもある「心理的安全性」「自己肯定感」を担保しながら、「できていること」への具体的なフィードバックをする。 それがZ世代への上手なほめ方のコミュニケーションとなるのです。 取材・文・構成：久遠秋生 バナーイラスト：藤田翔 図版制作：WATARIGRAPHIC デザイン：山口言悟（Gengo Design Studio）
