「経済力では太刀打ちできない」なぜアトレティコはアルバレスを獲得できたのか。シティ&パリSGとの“綱引き勝利”の舞台裏【現地発コラム】
「ハーランドの控えに不満という情報をキャッチ」
アトレティコ・マドリーは8月12日、マンチェスター・シティーからアルゼンチン代表FWフリアン・アルバレス(24)を獲得したと発表した。“ラ・アラーニャ”(クモ)の愛称で親しまれるアルバレスは、将来的にアントワーヌ・グリエーズマンに代わるプロジェクトの新たな旗手となることを期待されている。 【画像】2024年夏の移籍市場で新天地を求めた名手たちを一挙紹介! 条件面で上回るパリ・サンジェルマンではなく、アトレティコを選んだのも、主役級の役割を演じることができるチームでのプレーを切望したからだ。「パリとは経済力では太刀打ちできない。うちが活路を見出したのは、スポーツ面だ。アトレティコで与えられる役割の大きさに惹かれたんだろう」。幹部のこの言葉がそれを裏付ける。 移籍金はインセンティブ込みで約9000万ユーロ。近年、同じく高額な移籍金で加入した選手と言えば、ジョアン・フェリックス(1億2600万ユーロ)やトマ・ルマール(7000万ユーロ=保有権の70%分)の名前が挙がるが、シメオネが最も交渉に積極的に関与したのが今回のフリアン・アルバレスだった。 アトレティコは早くから、アルバレスがアーリング・ハーランドの控えに甘んじるシティでの状況に不満を抱いているという情報をキャッチしていた。その結果が便利屋扱いで、昨シーズン、ジョゼップ・グアルディオラ監督は59試合中54試合で起用したが、Optaによると、ポジション別の出場時間の内訳は、FW(1トップ&2トップの一角)38%、トップ下25%、ウイング&インサイドハーフ29%となっている。 アトレティコはシティに獲得を打診した。しかし最初のアプローチでは、色よい返事を得ることはできなかった。次にアトレティコが取ったのは、こういった時の常套作戦、つまりチーム内での役割に不満を抱いていること、今よりも重要な存在になれるところでプレーしたいという意思をアルバレスに表明させることだった。移籍志願である。 効果はてき面で、シティはあっさり移籍の門戸を開いた。グアルディオラは、もともと不満分子をチームに置くことを好まないし、クラブにとっても2022年1月にリーベル・プレートから2500万ユーロで獲得した選手を2年半後に、その3倍以上の額で売却できるという経済的なメリットがあった。