出口の見えない日大アメフット問題を米国ならどう対処した?
では、選手が監督やコーチから体罰や虐待的指導を受けているときには、どのようにしているのか。ここでも各大学に責任がある。チーム内での問題であり、大学が内部調査をする。 しかし、米国でも、長年にわたって競技実績を残しているスターコーチや指導者に対しては調査が甘くなる傾向がある。 日本でも同じことだろう。 イリノイ大学のアメリカンフットボール部では、ヘッドコーチが、怪我をしている選手に対し、適切な治療を受けさせず、無理に試合に出場させるよう圧力をかけていたことがあった。指示に従わないと、プロのスカウトに悪い評判を流すと脅したり、競技優秀者に与えられる奨学金を打ち切ることをほのめかしたりした。権力を濫用し、学生選手を精神的にコントロールしようとするコーチは、日大のアメリカンフットボール部だけではなく、米国にもいるのだ。 一人の選手が、アメリカンフットボール部を退部後に、内部告発をしたが、大学内部の調査は当初はコーチ寄りだった。しかし、過去に別の大学でこのコーチに指導を受けた選手らが実名で「同じようなことがあった」とツイッターを通じて発言。そこで、NCAAがイリノイ大学に対し、独立した第三者機関の調査を受けるように求めた。各大学での調査方法に疑問があるときは、NCAAが大学に対し、適切に調査するよう求めたり、調査結果を提出するように求めることもある。最終的にはこのコーチは解任された。 各大学での規定や、NCAAの規則に照らし合わせ、それに違反したかという観点から調査は行われている。まず規則を設け、その規則違反があったかの調査が行われ、処分が下される。そして、処分を科された者が異議申し立てをできることまでが、米国の大学運動部で問題が起こったときのプロセスだ。子どものスポーツでも同じようなプロセスを踏む。 日大の悪質タックル問題では、関東学連が、関係者への聴取などを行って厳正な処分を下した。また、スポーツ庁も日大から聞き取り調査などを実施している。 だが、しっかりとした日本版NCAAがあれば、この問題への対応は、もっと敏速に且つ、正しく進んでいただろう。