『昼顔』でブレイクの実力派女優・伊藤歩、テレビドラマ露出が増えたワケ
「テレビの力ってすごいなとあらためて実感」
そんな伊藤の意識が変わったのが、2011年だったという。 「東日本大震災直後に放送された(連続テレビ小説)『おひさま』に出演させていただいたのですが、岩手にいる祖母や田舎の親戚が、すごく喜んでくれて、テレビの力ってすごいなとあらためて実感したんです。そこから積極的にドラマのお仕事もさせていただくようになり『この仕事を一生続けていきたい』と感じるようになりました」 その言葉通り、「昼顔~平日午後3時の恋人たち~」をはじめ、「わたしを離さないで」、「セシルのもくろみ」など、テレビドラマでも個性的な役柄を演じ、高い評価を得ている。
原田眞人監督の現場は作品にかける情熱と密度が凄い
とは言うものの、やはり大きなスクリーンで躍動する伊藤の姿は“映画女優”の佇まいだ。名匠・原田眞人監督が構想25年をかけて完成させた『関ヶ原』では、徳川家康の忍びとして大きな役割を果たす。 「蛇白/阿茶というキャラクターは原田監督のファンタジー的な要素も入っているのかなと思っているんです。本作では合戦のシーンも素晴らしく男社会を描いていると感じるのですが、その中で天下人となる家康の側近役で出演させていただき、しかもそれが女性だったということに、原田監督の愛を感じました」と感謝を口にする。 「少ない役者人生ですが、幸運な事にもこれまで多くの素晴らしい監督とお仕事をさせていただきました。その中でも原田監督の現場は、この作品にかける情熱と密度が凄く『コンマ1秒の世界でもエネルギーを存分に発揮しなさい』というメッセージが伝わってくるんです」と興奮気味に撮影を振り返ると「毎日いろいろなことを感じ、学ぶことができた現場でした。今の日本映画で、馬の動きに至るまで、凄いアクションシーンを観ることができる時代劇はないんじゃないかなと思います」と目を輝かせる。 さらに、7月に亡くなった俳優の中嶋しゅうさんに触れると「しゅうさんは私と同じ伊賀者の赤耳役を演じられていました。突然のお別れになってしまいましたが、現場ではとても素敵な忍者役だなと思っていました」と故人を偲んでいた。 「役の大きさに関係なく、これまでに自分がいただいた役は本当に全て愛しています。いろいろな出会いに感謝し、とても光栄だなと思う一方で、まだまだ欲もあります」と語った伊藤。 「アクションももっとやっていきたいし、海外の映画にも出演したい」とさらなる活躍を誓っていた。 (取材・文・写真:磯部正和) 映画『関ヶ原』は8月26日より全国公開