中学生の時、リーダー格の女子が私を「無視するように」と命令を下したことでシャッターが閉じて。友達の関係を保つのに宗教組織のようなルールを強制されるのならば、そんな関係は必要なかった
◆「王道の偏屈ババア道だね」 私はその時、周りと自分の間に重厚なシャッターが勢いよく閉まるのを感じた。ただちに部活をやめ、ついでにたのきんトリオ好きのフリもやめ、その年の冬に一人で1ヵ月間フランスとドイツを旅した。 帰国後にリーダー格の女子が「あの時はごめんね」と謝りに来ても、閉じたシャッターが上がることはなかった。 14歳での一人旅という経験で、結局この世で頼れるのは自分しかいないということと、何かに帰属することが向かない自分の性質を痛感した私は、孤独や寂しさを回避するための人づきあいをやめた。 友達としての関係を保つのに宗教組織のようなルールの共有を強制されるのであれば、そんな関係は必要なかった。 若い時からそんな具合なので、私は友人関係を持続させるのが苦手である。しかし気がつくと、周りにいるのも私と似たようなへそ曲がりばかりで、互いに好き勝手をしていても、気が向いたら会ってしゃべれるようなスタンスが心地よい。 という話を息子にすると、「王道の偏屈ババア道だね」と笑われた。 (撮影=ヤマザキマリ)
ヤマザキマリ
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