森保 一(サッカー男子日本代表監督)×中川絵美里「『俺が王様』という選手ばかり。そんな彼らをリスペクトしている」
中川 「オールジャパン」のなせる強み、だと。 森保 そうですね。日本代表、日本サッカーの枠を超えて......これは、おこがましい言い方になってしまうのですが、日本そのものの価値を高めたいんです。サッカーというのはグローバルスポーツで、日本代表はただ勝つのみならず、勝つことで日本に対する世界中の見方を変えられる、ものすごく大きなツールだと考えています。 中川 22年のW杯カタール大会でのドイツ戦、スペイン戦での劇的勝利、そしてここまで続いている快進撃や世界ランキング(昨年11月30日に発表されたFIFA世界ランキングは17位)を見てもそれは感じます。 森保 これは余談なのですが、海外に行くと本当にたくさんの国々に日本人の方が必ずいて。世界と競争し合い、世界と協力し合い、日々闘っているわけです。そうした方々と出会う機会が多い中、「勝ってください」とすごく言われるんですよ。それは単に勝ってくれという願望を超え、日本という国の価値上昇への思いを込めているんですよね。 22年のW杯を終えてから、その国々での日本人に対する態度が変わったという声をたくさん聞きました。だから、日本の方々が異国の地で日本人としての誇りを感じられるように、われわれは頑張らないといけないんです。 ■「なぜ試合に出さない!?」選手たちの激烈な向上心 中川 選手招集において、U-23代表の大岩監督とは綿密なやりとりをされているとのお話がありましたが、現在は海外組が代表の大半を占めていて、粒ぞろいです。同時に、移動における大きな負担という問題も抱えていますが、そこはどうお考えですか? 森保 まず、選手に対しては、ふたつの考えがあります。ひとつは、選手が所属先で置かれている状況を鑑み、招集する試合をできるだけ吟味すること。少しでも、選手のキャリアアップにつながるようにしたいからです。 そしてもうひとつは、どんなに厳しい日程、移動があったとしても、それを乗り越えてタフになり、しっかりプレーできる姿勢を求めるということですね。もちろん、体の状態を見極めながらですが。 中川 選手ファーストの立場は取りつつも、求めるべきところはしっかり求めるということですね。今、選手は見事にそろっています。正直、選考で悩みませんか? 森保 もう、悩みまくりですよ。いい選手が多すぎるので。よく、うれしい悲鳴とかうれしい悩みという表現がありますけど、まったくそんなことはない。毎回、選手選考においてはつらい、苦しい、難しい(苦笑)。 海外組も、Jリーグにも有能な選手はたくさんいて。日本サッカーにとってはすごくいいことです。でも、監督の私からすれば、選考においてはプレッシャーしかないですね(笑)。