パワー半導体後工程、内製化率5割に引き上げ…東芝D&S、〝差別化力〟強化
東芝デバイス&ストレージはパワー半導体の後工程について、2025年度から内製化率を引き上げる。現在4割程度の内製化率を段階的に高め、最終的に5割程度にする方針。単機能のパワー半導体は放熱性能などの差別化が不可欠とされる。後工程の内製化を推進して差別化の対応力を強化し、付加価値の高いパワー半導体製品を訴求する。これにより利益率を高めて稼ぐ力を強化する。 30秒でわかる「パワー半導体」 パワー半導体は電力変換を行う単機能なため、前工程だけでなく後工程での差別化が欠かせない。特に大電流を流す特性上、放熱やレイアウトの最適化など、後工程による付加価値も大きい。今後、電気自動車(EV)の普及に伴い、顧客の要望に合わせてカスタマイズする需要が生まれるとみられる。東芝デバイス&ストレージはこうした付加価値の高いパッケージの後工程を自社に取り込む。 同社はパワー半導体の国内製造拠点として、前工程と後工程を行う加賀東芝エレクトロニクス(石川県能美市)と姫路半導体工場(兵庫県太子町)がある。国外ではタイの東芝セミコンダクタ・タイが後工程を担っており、内外で3拠点体制を構築する。また後工程の一部は外注で対応している。 現在は自動車向けの需要増を見据え、供給力強化を急いでいる。前工程では加賀東芝エレクトロニクスに総額2000億円を投じ、製造能力を増強する。24年中に300ミリメートルシリコンウエハーを使ったパワー半導体の新製造棟が稼働する予定だ。さらに追加で、もう一棟建設する方針で、一連の投資で生産能力は21年度比で3・5倍に高まる。このほか25年からは姫路半導体工場で新たに後工程の生産が始まる予定だ。 またロームとの協業を通じ、炭化ケイ素(SiC)パワー半導体の製造能力も高める方針を示している。