「浦島太郎」を疑似体験: 大分NPOが傷ついたウミガメの飼育・リハビリ体験を観光客に
記事のポイント ①ウミガメが回遊する豊後水道は、生物多様性のホットスポットだ ②毎年数百のウミガメが、漁業混獲で損傷し、治療も受けられず海に帰される ③ウミガメ支援の地元NPO は観光客にも救出・治療後のリハビリ体験を提供する
観光を通じて、生物多様性の保全などのサステナビリティへの意識を高める取り組みが進んでいる。立命館アジア太平洋大学サステナビリティ観光学部のジョーンズ・トマス教授に寄稿してもらった。 ◆ 豊後水道は九州と四国の間にある海峡です。瀬戸内海からの海流と太平洋からの暖かい黒潮が混ざり合う生物多様性のホットスポットです。海岸線には、穏やかな海と豊富な餌を求めて、ウミガメなどの大型の海洋脊椎動物が集まりますが、漁業が盛んなため、年間1,000匹余りのウミガメが混獲されていると推定されています。 ウミガメは、海洋プラスチックを誤食しているケースが多く、マイクロプラスチックバイオモニタリングの指標種でもあります。 NPO法人おおいた環境保全フォーラムは2016年、はざこネイチャーセンターを設立しました。九州の大分県鶴見半島の東端に位置するこの保護施設は、地元の漁網に誤ってかかってしまったウミガメの救出とリハビリを行っています。 観光を通じて、生物多様性の保全などのサステナビリティへの意識を高める取り組みが進んでいる。立命館アジア太平洋大学サステナビリティ観光学部のジョーンズ・トマス教授に寄稿してもらった。 この施設で飼育されているウミガメは、世界に7種類いるウミガメのうち、アオウミガメ、タイマイ、アカウミガメの3種類です。 救出されたウミガメは、2~3か月のリハビリテーションを受けてから太平洋に放流されます。海水ポンプなどの水族館のような設備を備えた飼養水槽は、治療のため一時飼養するウミガメから排泄されるマイクロプラスチック類の採集調査するために使用されます。 2019年夏の予備期間では、約200人がプログラムに参加し、カメのリハビリテーションと海への放流(野生復帰)を観察しました。
■観光を通じて生物多様性保全への意識高める
NPO法人おおいた環境保全フォーラムは2024年から津久見市イルカ島と連携し、ウミガメの保全活動を広く伝える活動を行っています。 観光客は、救出されたウミガメと直接触れ合い、インタラクティブな体験を通じてリハビリの過程を観察することができます。参加者はウミガメの生物学、自然史、リハビリテーションのプロセスに関する解説付きのプレゼンテーションを受けてから、リハビリテーションゾーンに案内されてウミガメを観察し、ウミガメと触れ合います。 イルカ島の環境教育の目的は、愛されながらも絶滅の危機に瀕しているウミガメについての意識を高め、意識、研究、活動を促進することです。 私の所属する立命館アジア太平洋大学(APU)でも、2023年に3 つの教育イベントを実施しました。 APUが2023年に新たに開設したサステナビリティ観光学部の新入生全員を対象としたイルカ島へのエクスカーションのほか、学部2年生7名を対象に実施した津久見市での2泊3日インターンシップ*、そしてインターン生が直接地元住民に感想を発表する市民講座の開催です。 NPO法人では今後、ウミガメの窮状に対する意識を高め、九州沿岸での保護活動を促進するために、野生動物観光視察ツアーなど、自然型観光イベントを計画しています。