ダルビッシュ「悟り」の境地 大谷翔平との再対決にも山本由伸と初の投げ合いにも「泰然自若」
【ロサンゼルス(米カリフォルニア州)10日(日本時間11日)=斎藤庸裕、四竈衛】ドジャース大谷翔平投手(30)とパドレス先発のダルビッシュ有投手(38)が、同地区ライバル対決の決戦に臨む。2勝2敗で迎えた地区シリーズ第5戦は、ドジャースタジアムで行われる。第2戦は大谷が3打数無安打でダルビッシュに完敗。ポストシーズン(PS)2度目の対決でリベンジとなるか。またド軍が山本由伸投手(26)の先発を発表し、雌雄を決する大一番で日本人投手対決が実現することとなった。前日は両軍ともにチームの全体練習を行い、準備を整えた。 ◇ ◇ ◇ 会見場を見渡すダルビッシュの姿は、まさに「泰然自若」だった。シリーズ突破をかけ、雌雄を決する大勝負。ド軍大谷との再対決、山本と初めて投げ合う可能性…と、日米両国から一身に注目を集める一戦を控えても、38歳の大ベテランは終始、穏やかな表情で胸の内を言葉に変えた。「メンタル面としては、例年より今までと全然段違いで落ち着いている、そういう感じです」。血気盛んな闘志を包み隠しているわけでなく、ただ、心静かにその時を待つ。日米通算20年間の経験に基づいた、「悟り」にも似た心境だった。 今季は5月末の登板を最後に、相次ぐ故障、さらに家庭の事情でチームを長期離脱した。負傷者リスト(IL)からその後は制限リスト入り。戦列復帰までのプランは、事実上「白紙」だった。その一方で、8月下旬に再合流を決断。「それまでは帰って来るとは思ってなかったです」。コンディションを整えつつ、マイナーでの試運転を進め、9月上旬にメジャー復帰。その後は3連勝と調子を上げ、ポストシーズンに間に合わせた。「すごく元気。この時期、いつもいろいろ痛いところがあるんですけど、今年はそういうのもすごく少ないです」。例年であれば疲労が蓄積し、気持ちで乗り切るのがポストシーズン。だが、今季は心身ともに、不安材料はない。 6日の第2戦では、大谷を3打数無安打に封じ、7回1失点と快投。再現への期待も高いが、気負いはない。「打者の反応を見て、今の時点で何も考えてないですけど、試合が始まってからいろいろと考えていくのが自分のやり方」。山本との投げ合いについても「お互いにこういう舞台で投げ合えるのはすごく幸せなこと」と、柔らかい笑顔で抱負を口にした。あふれ出る感情を素直に表現する大谷に対し、泰然自若のダルビッシュ。敵地の異様なムードも、ベテラン右腕が意に介するはずはない。 ◆大谷VSダル 大谷は地区シリーズ第2戦で先発のダルビッシュと3度対戦。初回の第1打席はカウント2-2から5球目外角スライダーに空振り三振、3回1死走者なしの第2打席は外角スプリットを一ゴロ、6回先頭の第3打席はフルカウントからカーブを打ち損じて投ゴロに倒れ、無安打に終わった。これで対戦成績は公式戦を含めて通算8打数1安打、3三振。 ▼ダルビッシュはポストシーズン(PS)通算5勝。日本人投手では田中将大の5勝と並びPS最多勝利を挙げており、単独最多を狙う。過去のPSでは12年ワイルドカードゲーム、17年ワールドシリーズ、20年ワイルドカードシリーズ、22年リーグ優勝決定シリーズと敗れれば敗退が決まる試合に4度先発して0勝3敗。今回は勝利となるか。