職場で「成長が止まる人」を見抜く、シンプルで確実な方法
● 「成長が止まる部下」の原因は 意外とシンプル 「部下が成長しない」「部下の成長が止まっている」。そう嘆く上司がいます。 【この記事の画像を見る】 確かに、リーダーにとって、部下の成長は悩みの種です。部下の成長が止まってしまえばチームの生産性も上がらず、最終的には組織の力も弱まってしまいます。 やる気がない部下は論外ですが、真面目に仕事に取り組んでいるのに成長しない部下がいるのはなぜでしょうか。 最大の原因は、「なれる最高の自分になる」ための努力をしていないところにあります。 人には「なれる最高の自分」というものがあり、多くの人はそこに至っていません。そして、何となく目の前の仕事をこなしていたら、いつの間にか「なれる最高の自分」になっていた…ということはありえません。「散歩のついでに富士山に登った人はいない」のです。 常にそれを意識して、具体的な目標を持ち、実現する努力が必要です。 冒頭の上司の嘆きに話を戻しましょう。 実は、「部下が成長しない」のは、必ずしも部下のせいとは言えません。むしろ上司、あるいは会社の方に原因があることも多いのです。 「なれる最高の自分になる」ことを目指さなくても許される社風になっていたり、目標を設定する仕組みがなかったりすると、恐らく多くの部下は易(やす)きに流れてしまいます。 『ビジョナリーカンパニー2』(J.C.コリンズ著)の冒頭にあるように「GoodはGreatの敵」ですから、現状のGoodな状態に満足していては、Greatにはなかなかなれません。 実は、成長が止まっている部下やメンバーを見分けるための「シンプルで確実な方法」が一つだけあります。実際に私も自分の会社で実践して効果を感じているものです。
● 上司が「なれる最高の自分」を目指さなければ 部下が成長することはない その方法とは、「定期的に目標設定を行うこと」です。 私の会社、小宮コンサルタンツは17名の会社ですが、年1回、期首に経営方針発表会を行います。そのとき、今期何をするかという社員個人の目標も発表してもらいます。 今年は「本を書きます」という人が複数人いました。出版市場が縮小している今の時代、“新人の物書き”が本を出すことは容易ではないのですが、本を出す機会を得るために毎日1000字のブログを書いている人もいます。 そういう努力を積み重ねている人は、いつか本を出せるでしょうし、何よりも書き続けているうちにいろいろなことを勉強して能力が向上します。資格を取りますという人もいました。「なれる最高の自分になる」ためなら、どんな目標でもいいのです。向上しようと思うことが大切なのです。 さらに社員には月1回、各人の目標シートを提出してもらいます。それには「良い仕事」――お客さまが喜ぶ事、働く仲間が喜ぶこと、工夫――をする具体的な行動目標を書く欄があります。 もちろん書いて終わりではなく、月末に達成度合いを5段階で自己評価し、上司が5段階で評価し、私がコメントを書いて戻すということを繰り返しています。 私の会社は小さな会社のため、全員に目が届きやすいし、私が直接会って話をすることもできますが、それでも個々の社員の細かい部分までは分からないため、目標シートはコミュニケーションのツールとしてもとても役に立っています。当社のお客さまがやっておられたのを真似たものです。 多くの上司は部下の成長を願っているはずです。会社に長期や短期の目標を設定する仕組みがあればそれに越したことはありませんが、もしそれらがなくても、長期的や短期的にどうなりたいのかということを上司は部下に常に聞き、目標設定のサポートをすればいいのです。そうすれば、「部下が成長しない」と嘆くことはなくなるし、部下のためにも会社のためにもなるはずです。 自分の可能性を信じて、「なれる最高の自分」を目指す努力をしていれば、成長しないことはあり得ません。ただし、重要なことが一つあります。「なれる最高の自分になる」ための努力を上司自身がやっていないと、部下はついてきません。 やる気がない上司が部下に「成長しろ」「頑張れ」とはっぱをかけても、部下は心の中で「お前が成長しろ」「お前こそ頑張れよ」と思うだけです。
小宮一慶