批判逆手に取った「バイデノミクス」中間層重視の新スローガンは有権者に響くか? シカゴで見た熱狂と貧困【2023アメリカは今】
▽「民主党も共和党も応援しない」 政治への関心も強いハーヴェスさんだが、バイデノミクスが自身の境遇改善につながるとの期待はないと言い切る。「実際に何かに立ち向かえるとは思えない。どこまで本気なのか」と疑問を口にする。 隣で取材に応じたファーガソンさんは幼いころに虐待を受けたという。ホームレス状態になってからは住宅支援を受けようとする過程でアパート管理人から性行為を強要された。路上での生活は丸4年となり、別れて暮らす「子どもを取り戻したいだけ」。しかし「助けを必要としても権力を握る人たちは答えてくれない」と悲観も強い。取材の合間にも、通行人から罵声を浴びせられ、「民主党も共和党も応援しない」と涙をこぼした。 ▽踏み込み不足の「新しい資本主義」 日本にとっても貧富の格差拡大は喫緊の課題だ。岸田文雄首相は就任時に「新しい資本主義」を掲げたが、踏み込みは弱く、安倍政権が掲げたトリクルダウン政策である「アベノミクス」の影がいまだ色濃く残る。トリクルダウンを痛烈に批判するバイデン氏ですら、対抗策はあいまいなまま。「こぼれ落ちた」人々へ政治が希望を示していけるのか問われている。