「マブリーという愛称はお気に入り」俳優兼プロデューサーの先駆けであるマ・ドンソクにインタビュー──映画『犯罪都市 PUNISHMENT』
拳ひとつで大暴れしながら凶悪犯たちに挑む人気アクションシリーズの最新作『犯罪都市 PUNISHMENT』が公開される。本シリーズで、シナリオの原案をはじめ、企画や制作、さらに主人公マ・ソクトを演じるマ・ドンソクにインタビューをした。映画の顔でありながら、プロデューサーとして多数の作品を真摯に支える彼は、ついついやりすぎてしまうマ・ソクトの真っ直ぐな姿と重なる人物だった。 【写真を見る】大ヒットシリーズの新作『犯罪都市 PUNISHMENT』のアクションシーンをチェックする
■やりすぎ最強刑事 VS IT犯罪組織 韓国で生まれ、アメリカに移住し、30歳で韓国に戻り、本格的に俳優活動を始めたマ・ドンソク。2021年には、マーベル・シネマティック・ユニバース『エターナルズ』でハリウッド進出も果たし、俳優としても、プロデューサーとしても国内外で活躍する彼が手掛けるのが、韓国を代表するメガヒットシリーズ「犯罪都市」シリーズだ。4作目となる『犯罪都市 PUNISHMENT』では、残虐行為で職務を解かれた特殊部隊出身の“元傭兵”(キム・ムヨル)率いる国際オンラインカジノ組織を殲滅すべく、IT犯罪に拳ひとつで立ち向かう。 マ・ソクトのアクションとスリリング且つユーモラスなストーリー展開が大いに楽しめる本作は、シリーズ史上最高のオープニング成績を記録し、さらには累計韓国動員数4,000万人を突破。ヒット作をプロデュースし続けるマ・ドンソクの言葉から、愛される映画を生み出す秘訣を探る。 ──「犯罪都市」シリーズは毎回個性的で素晴らしいスタッフ・キャストが揃っていますが、一緒に働くチームのメンバーに求める共通した性質はありますか? まずは、一緒に作業するスタッフとキャストの人となりが大事だと思っています。なぜなら、体力的に大変な現場が多いですから、その中で一緒に作るとなると、ポジティブな人が集まる方がいいですよね。特に最近の映画の現場は、誰か一人がリーダーとなって引っ張っていくスタイルではなく、チームが各パートでリードすることが求められますし、コミュニケーションを積極的に取らなくてはいけません。そういう意味で、人柄が良く、努力する人たちにチャンスを与えたいと思ってます。 ──俳優の場合、もちろん、演技力、個性だけでなく、体力、体づくりが重要な印象があります。 「犯罪都市」はアクションがとても大切なパートであるシリーズなので、事前に何ヶ月か体の動かし方を習わないと、演技とアクションがシンクロしないんです。今回は、演技力に加え、アクションをこなせる基礎体力が重要だったので、昔から鍛えていて、武術もお芝居も素晴らしいキム・ムヨルさんがヴィラン役にハマると思い、キャスティングしました。 ■旧知のアクション監督を演出に抜擢した理由とは? ──新作では、過去全3作でアクション監督を務めたホ・ミョンヘン監督がメガホンをとっていますね。 アクション監督であるホ・ミョンヘンさんは、自分がまだ俳優として駆け出しの頃に、スタントダブルもやってくれていましたし、20年という古い付き合いをしてきた間柄です。昔からホ・ミョンヘンさんがアクション監督をされるときに、単にアクションが上手いだけではなく、作品全体を見てアイデアを積極的に出す姿を見ていて、この人は演出ができるなと感じていました。そして、何年か前から彼を演出家としてデビューさせたいと思うようになったんです。彼に相応しい作品は何だろうと考えていたところ、Netflix映画『バッドランド・ハンターズ』(24)と『犯罪都市 PUNISHMENT』の企画が実現することになり、監督を彼に任せることにしました。 ──マ・ドンソクさんが監督を依頼したとき、ホ・ミョンヘンさんがどんなリアクションをされましたか? 「今回のシリーズの監督をやってみないか?」と最初に聞いたときは、「……え?」という返事だったんですね。それで、「一回やってみたらどうだ? お前ならできる!」とフォローしたんですけど、それでも「……え?」という感じで(笑)。最後に、「ちょっと考えてみて」と言ったら、「わかりました。頑張ります」という返答がありました。 ■毎作異なる魅力を放つ、「犯罪都市」シリーズという挑戦 ──シリーズは8までの構想があるそうですが、ほかにもたくさんアイデアがあるのでしょうか? このシリーズもそうですし、他に制作中の映画など、20年前から企画や原案のアイデアをたくさん貯めていて、ずっと準備しています。現在、韓国国内だと60-70本ほど進行中のシナリオがあり、フィリピン、インドネシア、日本も視野に入れて、グローバル作品としても何本か進行中です。また、ハリウッド作品も12本ほどアメリカとやり取りしながら準備をしています。早速来年から撮影に入るものもありますよ。自分の趣味はボクシングで鍛えるか、撮影のために現場に行くか、あとは家でシナリオを開発するといった感じなので、仕事=趣味なんです。 ──マ・ドンソクさんにとって、「犯罪都市」シリーズはどんなチャレンジの場になってますか? 「犯罪都市」シリーズは、作品毎に事件が異なり、出てくる登場人物も異なるので、常に面白いものを作るのは大変です。かつ、アクションも新鮮なものにしなくてはいけません。コメディでありながら、アクション映画でもあるので、重すぎず、けれども軽くなりすぎないようにバランスを取らなくてはいけない。説明的というより観客のみなさんに直感的に楽しんでもらうためには、作る側としてはより緻密な計算をしなければいけないと常に思っています。そこのさじ加減がとても難しい映画ではありますね。 毎回成績はあまり気にせず、皆さんに楽しんでもらえる映画を作りたいと思っています。 ──新作が出た際、どんなフィードバックがあると嬉しいですか? 4作ともトーンを変えているので、こちらの意図がちゃんと伝わり、今回はこういうところがスッキリしたとか、スカッとしたとか、そういうリアクションをいただくととても嬉しいです。今後も、シリーズのトーンを変えて作っていこうと考えています。 ■芝居にも役立つプロデュース業 ──近年、ハリウッドでは、主演俳優もしくは俳優が制作会社をつくったり、プロデュースをするという流れが一般的になってきていますが、韓国の状況も変化していますか? まず、私は韓国にBIG PUNCH ENTERTAINMENT、アメリカにBIG PANCHI GLOBALという制作会社がそれぞれあり、両方で制作・企画・出演を兼ねています。昔は役者がプロデュースをしたり、脚本を書いたりすると、芝居に集中していないといった妙な先入観を向けられたものですが、今は「犯罪都市」シリーズのケースもあり、そういう先入観はなくなったと思います。そして、私自身は、企画のプロデュースや脚本を書くというクリエイティブな行為は、実は芝居とすごく深いところでつながっていると考えているんです。役者は脚本を読んで登場人物の心情を理解することが大事ですから、本を書くことは芝居にも役に立つんですよね。ハリウッドに自分の制作会社をもっている俳優が多いように、韓国の俳優の中にも自分で制作や演出をやってみようという動きが出ていることはとてもいい流れだと感じています。 ──最後に愛称についての質問を。マ・ドンソク×ラブリーでマブリーというニックネームは韓国だけでなくもはや日本でも定着していますが、この愛称についてはどんな思いがあるのか、聞かせていただけますか? 長い間、みなさんからこのニックネームで呼んでいただいてますが、とてもポジティブな愛称なので感謝しかありません。今年の2月に、『犯罪都市 NO WAY OUT』の上映で舞台挨拶で日本を訪れたとき、観席から「マブリー!」という声が聞こえてきたのが、自分ではすごく不思議な気分だったんですね(笑)。みなさんから愛されていることを実感できて嬉しく思いました。いい内容のニックネームであれば、常にウェルカムです。 『犯罪都市 PUNISHMENT』 9月27日(金)新宿ピカデリーほか全国ロードショー 配給:ハピネットファントム・スタジオ ©2024 ABO Entertainment Co.,Ltd. & BIGPUNCH PICTURES & HONG FILM & B.A.ENTERTAINMENT CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED. 文・小川知子、編集・遠藤加奈(GQ)