愛知の「招き猫」人気です ── 統一地方選など影響で限定モノ完売
原点回帰!? スタンダードな“常滑系”が外国人の心つかむ
一方、招き猫の最大の産地とされる常滑市でも、近年格段に売り上げを伸ばしている。2月の春節時期には、中国や韓国の観光客に飛ぶように売れたという。同市最大級の規模を誇る常滑焼ショップ「ヤマタネ」にも観光バスに乗った外国人ツアー客が多く訪れる。 「一つひとつ手仕事で制作しているため、生産が追い付かないほど」と、スタッフの伊奈義隆さんは苦笑い。とくに人気が高いのは、「常滑タイプ」とよばれる最もスタンダードなもの。頭が大きく小判を抱えた、誰もが思いうかべるポピュラーな招き猫が外国人の心を掴んでいる。 「中国でも招き猫は人気があり、日本のものを真似て作られてはいるのですが、原点回帰というのでしょうか、常滑ならではの絵付けや表情が高く評価されているようです。とくに目とアイラインは一子相伝とされ、窯元ごとの個性が際立つ部分で、職人の技が光ります」
「瀬戸系」は本物の猫に近い姿
招き猫の二大産地としての地位を確立している常滑と瀬戸であるが、「常滑系」「瀬戸系」として異なる特徴と歴史を持つ。 江戸末期に江戸の地で誕生した最初の招き猫は、素朴な土人形だったとされる。粘土を素焼きして泥絵具で彩色したごく粗末な人形ではあったが、縁起物として江戸庶民がこぞって買い求めた。やがて全国へと広がり、各地で特色ある招き猫が作られていく。 瀬戸市で招き猫の製造が始まったのは約100年前の明治30年代頃。瀬戸焼の量産技術を用いた、日本で最初の量産招き猫だった。「瀬戸系」招き猫は、すらっと猫背で本物の猫に近い姿をしており、かわいい見た目では決してなかったという。
小判を抱えた「常滑系」は戦後のデザイン
大きな頭と目、二頭身で小判を抱えた「常滑系」は、瀬戸の招き猫の誕生から50年後、戦後の昭和20年代に常滑市で考案されたデザイン。そのデフォルメされた容姿がいわゆる現在のかわいらしい「招き猫」のイメージキャラクターとして定着したのだ。 「瀬戸の招き猫はスタイルも表情も本当にさまざま。寝っころがって手招きしている猫がいたり、毎年新作もいろいろ登場します。それが楽しくて集めているファンも多いですよ」と井上さん。 ちなみに「ヒョウ招き」は、多彩なデザインが揃う招き猫の中でもかなり珍しいのだとか。 「三毛柄など実際にいる猫の模様を付けたり、トラ柄の招き猫はありますけど、大型のネコ科であるヒョウの柄を付けるなんて、何とも独創的です」。 ちなみに招き猫には右手挙げと左手挙げのタイプがあり、前者は「金招き」、後者は「人招き」とされる。最近は両手を挙げた「両手招き」も登場し、「万歳招き」ともいわれるが、「できれば両方招きたい!」と大人気。さらには色によっても、白は開運招福、黒は厄除け安全、ピンクは恋愛成就などご利益が異なるのだとか。 ちょうどいまは新年度。新たな目標に合わせ、自身で招き猫を選んでみるのはいかが?