初挑戦から55年、またも跳ね返された凱旋門賞の高くぶ厚い壁。エルコンドルパサー、オルフェーヴルにあってシンエンペラーに足りなかった“アウェー克服スキル”
降雨でタフなロンシャンの凱旋門賞は“別物”
とはいえ、シンエンペラーの走りが凱旋門賞において上位と差のあるものであったのは確かだ。矢作調教師はレース後、グリーンチャンネルの取材に答えて、「馬の状態は良く、レース展開も悪くなく、馬場状態も想定の範囲内だったので、現状では敗因をつかみ切れていないというのが正直なところです」とコメント。前走のアイリッシュチャンピオンステークス(G1、レパーズタウン・芝2000m)で差のない3着に食い込んで評価を高めたが、降雨でタフなコンディションになったロンシャンの凱旋門賞は、また“別物”ということだ。 それを考えると、「重」の凱旋門賞で2度(2012、13年)も2着に食い込んだオルフェーヴルの怪物的能力が、あらためて恐るべきものだったと感じさせられる。同じく「不良」の1999年にモンジューと死闘を繰り広げて2着となったエルコンドルパサー、2010年に「重」で2着となったナカヤマフェスタにも、その適応力の高さに感服させられた次第である。 スピードシンボリの初挑戦(1969年)から55年、のべ35頭が挑戦してきた日本馬に、また11度目の参戦となった武豊騎手にも、また栄冠は訪れなかった。凱旋門賞が世界の競馬の頂点だとは言わない。しかし、乗りかかった舟ではないが、どこかでこの壁を乗り越えるべき大目標であることに変わりはあるまい。そのためには、敗れても敗れても挑戦を続けることでしか大望に達する術はない。 文●三好達彦
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