「逆に学ばせてもらっています」“レスリング最強女子”藤波朱理20歳の父が明かす“イマドキの親子関係”「娘に怒られることも(笑)」
「性格的にはマスコミに注目してもらいたいタイプ」
初めてのシニアの世界の舞台で、朱理は圧巻の強さを見せつけた。初戦から決勝まで全試合テクニカルフォール(現テクニカルスペリオリティー)勝ち。フォールならまぐれもあるが、得点差による「コールド勝ち」は実力差がないとできない。その意味でもセンセーショナルな世界デビューだった。 筆者はこの大会を現場で取材しているが、朱理が緊張している素振りを微塵も感じさせなかったことを覚えている。大舞台でもまったく物おじしない性格なのだ。 いみじくも俊一さんは言う。 「性格的にはマスコミに注目してもらいたいタイプ。記者に囲まれる方が喜んでいる」 初の世界選手権での衝撃は続く。ミックスゾーンで筆者が日本語でやりとりしたあと、UWW(世界レスリング連合)の取材が待ち受けていた。通訳は用意されていなかったが、英語での質問を受けるたびに朱理は迷うことなく、よどみない英語を返していたのだ。 俊一さんは「英語でのやりとりは事前に準備していました」と打ち明ける。 「子供のときからレスリングと英語だけは習わせていました。自分も引率で海外に行く機会があるけど、現地では英語の重要性を痛感します。コミュニケーションがとれなければ、もったいないじゃないですか。世界選手権に行く前に、英語の先生に問答のレクチャーをしっかり受けていました。最初から本人も優勝する気でいたんでしょうね」
“ともに学んでいく”親子の関係性
俊一さんは朱理にこんなことを言ったことがある。「今まで誰もやっていないことをやろうぜ」。とはいえ、全てが順風満帆というわけではない。今春には練習中に右ヒジを脱臼。その影響で4月のアジア選手権は辞退することになってしまった。一昨年の世界選手権前にも、足の甲を負傷して出場できなかった。常に全力で練習するタイプだけに、無事是名馬というわけにはいかないのだ。 ケガをしたあとの復帰までの道のりは、ふたりで話し合いながら決めている。朱理とのやりとりで、俊一さんは自分が未熟者だと感じさせられるときがあるという。 「ケガをしたときも不安をあまり表に出さない子なので、大したものだと思います。むしろ自分の方が不安になって、一緒に車に乗っているときにため息をついたりしている。僕の方からプレッシャーをかけてしまっているのかもしれない。サポートしなければならない立場なのに、逆に学ばせてもらっていますね」 減量期や試合直前など朱里がピリピリしているときには、自分が“当たられ役”でもいいとも思っている。全てはオリンピックのために。 「去年の世界選手権でアップしているときも、僕が計っている時間がちょっとでも遅れたら怒られました。普段はそうでもないんですけどね(笑)」 かつてスポーツの親子鷹といえば、漫画『巨人の星』に出てくる父・星一徹と息子・星飛雄馬のような、時には鉄拳制裁も辞さないような苛烈な親子関係が鉄板だった。時代は変わる。いまは藤波親子のように、“ともに学んでいく”関係性が求められる時代なのか。 <前編から続く>
(「オリンピックPRESS」布施鋼治 = 文)
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