アメリカで“女子スポーツ史上最大のメディア投資”が実現。米在住の元WEリーグチェアに聞く成功の裏側
日本と決定的に違う“投資家へのメリット”
日本がアメリカのやり方から学ぼうとしても、限界がある。スポーツが非日常ではなく「日常」になっている欧米と日本では、そもそも「スポーツに投資する」根本的な考え方の違いがあるからだ。加えて、制度面の決定的な違いがあると岡島氏は言う。 「アメリカの税制では、スポーツへの投資はオーナー個人の事業所得に対する経費として相殺することができます。好きなチームに投資しながら企業イメージを高めて、節税にもなる。スペインでも、2017年に女性スポーツへの投資に対して税制を優遇するように法律が改正されました。そうした土壌がそもそも日本とは違うので、単純に比較することは難しいのです」 スペイン女子代表は、ワールドカップに初出場した2015年以降、急速に競争力を高め、3度目の出場となった今夏のワールドカップでは世界一に上り詰めた。バルセロナやレアル・マドリードなど、男子のビッグクラブが女子チームにも投資し、環境面も良くなった。 「日本も、女子スポーツの税制を優遇するようなメリットがあれば、企業もお金を出しやすくなると思います」と岡島氏。元競泳選手の井本直歩子氏が代表を務める「一般社団法人SDGs in Sports」など、各種スポーツ団体に情報を共有し、変化の糸口を探っているという。それが実現すれば、「スポーツを文化に」する一つのきっかけになるだろう。 女子サッカー界でアメリカの一強時代は終わり、欧州各国の台頭による群雄割拠の時代に突入している。だが、プロリーグの成功やイコール・ペイの実現など、女子サッカー界のビジネスや人権問題における成功事例を作ってきたアメリカの存在感は揺るぎない。今回の放映権契約も、その新たな事例となる。 NWSLに続き、放映権ビジネスで成功を掴む国は出てくるだろうか。オリンピックイヤーとなる2024年も、激動の女子サッカー界から目が離せない。 <了>
インタビュー・構成=松原渓[REAL SPORTS編集部]