メイシーズが「 ブランドロイヤルティ 」を高めるため、2024年に取り組むこと:オムニチャネル体験の最適化へ
2024年の全米小売業協会(National Retail Federation、以下NRF)主催のビッグショー(Big Show)のセッションで、メイシーズ(Macy’s)のカスタマージャーニー・シニアバイスプレジデントのベネット・フォックス=グラスマン氏は、ハイパーパーソナライズされたコネクテッドジャーニーを通じて、同百貨店ではどのように顧客体験を刷新しているかについて説明した。フォックス=グラスマン氏の指揮の下、メイシーズは消費者の行動をよく理解し、ブランドロイヤルティを高め、最終的には売上を伸ばすべく、より多くのリソースを割いている。 「パーソナライゼーションは、長いあいだメイシーズの優先事項だった」とフォックス=グラスマン氏はGlossyに語った。「これまでも、おすすめ商品のパーソナライズ、eメール、SMS、プッシュプログラム、店舗やアプリでのさまざまな体験、そして(パーソナライズに特化した)有料メディアなどを提供してきた。そのそれぞれが顧客との関係性を深めてきた。また、よりパーソナライズされた体験に触れた顧客から、さらに大きな関心を得ている」。
パーソナライゼーションにゼロから取り組むメイシーズ
メイシーズの会長兼CEOのジェフ・ジェネット氏は2022年8月に行われた第2四半期決算説明会で、「顧客とのエンゲージメントを高め、オムニチャネル体験を最適化するために、パーソナライゼーションを含むデジタル機能を引き続き強化している」と語った。また当時、アプリのアクティブ顧客は前年同期比で約17%増加しており、一方で「スターリワード(Star Rewards)のアクティブ会員数は2950万人で、オウンド・プラス・ライセンス(ブランド顧客)全体の70%を占めている」と付け加え、前年同期比で5%増加したことを明らかにした。 メイシーズは、10月決算の2023年度第3四半期のアナリスト予想を上回り、全体の売上高が前年同期比7%減の50億ドル(約7405億円)となったと発表した。その結果、約4130万人のアクティブ顧客がメイシーズのブランドを購入し、スターリワードプログラム会員がオウンド・プラス・ライセンス売上高の約72%を占めたことが明らかになった。だが2024年1月18日、リテールダイブ(Retail Dive)は、メイシーズが従業員を3.5%削減し、メイシーズの5つのフルライン店舗を閉鎖する計画だと報じている。トニー・スプリング氏が、2024年初めにジェネット氏のCEO職を引き継ぐ予定だ。 フォックス=グラスマン氏によると、2024年、メイシーズはパーソナライゼーションの具体的な方法に注力することになるという。「顧客にとって重要なアプリケーションに集中することが大切だ」と同氏。 「メイシーズは(パーソナライゼーションのための)5つのユースケースに焦点を当てることから始めている。そのユースケースには、(補完的な購入で)顧客に『コーディネートを完成させる』よう促すこと、顧客が次に試すべきカテゴリーを発見する手助けをすること、私たちが提供するオムニチャネルのメリットを(顧客が確実に)理解するようにすることなどがある」とフォックス=グラスマン氏は言う。メイシーズが優先的に取り組んでいるそのほかのユースケースには、初回購入から2回目購入までの促進、オンラインショッピング利用者の店舗での買い物と、店舗利用者へのオンラインショッピングの促進、メイシーズクレジットカードの利用率向上、高消費顧客を再び引きつけることなどが挙げられる。 Glossyは、NRFでのセッション登壇後のフォックス=グラスマン氏に、メイシーズのパーソナライゼーションへの取り組みに何が待ち受けているのか、そしてこれらのイノベーションを完成させる上で予想される課題について話を聞いた。 ーーメイシーズのパーソナライゼーションの未来はどのようなものか? 「これまでの取り組みがより戦術に特化したものであったのに対して、今後の焦点は、顧客のためにすべてを統合することだ。顧客は私たちとの関係や会話を望んでおり、まさしく会話と同じように、中断したところから再開できることが重要だ。当社の願望は、顧客がeメールを受け取る、店舗に足を運ぶ、アプリを開く、メイシーズの広告を見るなどのいずれにも関わらず、顧客に対してひとつの声で語りかけることだ。我々が優先している投資は、この願望を実現するものだ。 2024年も、パーソナライズされた体験をもたらすための投資を続ける予定だ。各チャネルをつなげることですばらしい体験が生まれると信じており、当社の初期の結果からそれが顧客エンゲージメントの向上につながることが示されている。顧客が当社の投資の指針となるので、2024年には人気のあるセールやイベントでパーソナライゼーションがさらに進み、顧客が情報を得るさまざまなチャネルでも多くのパーソナライゼーションが行われるだろう」。 ーーパーソナライゼーションに対するメイシーズのアプローチは競合他社とどう違うのか? 「メイシーズはオムニチャネルでマルチカテゴリーであることが強みだ。我々は顧客のスタイルセンスを熟知しており、アパレル、アクセサリー、美容、ホームの各分野で、顧客がインスピレーションを得て、最高の商品を購入できるよう手助けができる。またロイヤルティプログラムであるメイシーズ・スターリワードも業界をリードしており、70%以上の普及率を誇っている。ロイヤルティとパーソナライゼーションを組み合わせることで、これらの分野において、また分野を超えて、より適切な商品、サービス、インスピレーションを提供することができる」。 ーーメイシーズがパーソナライゼーションを成長・拡大させる際、もっとも困難に直面すると予想される点は? 「多くの豊富なデータとAIの急速な進歩により、我々は顧客により質の高いパーソナライゼーションを提供できることに期待を寄せている。また、愛されるメイシーズブランドに忠実であることに細心の注意を払っている。競争力のある主導的な立場を維持しながら、全員がこれらのツールの使い方を共に学び、新しいツールやテクノロジーが持つすばらしい可能性と、ブランドにふさわしい体験を生み出すこととのバランスを取るよう努めている」。 [原文:How Macy’s is using personalization to retain customers] TATIANA PILE(翻訳:Maya Kishida、編集:山岸祐加子)
編集部