「必要な会社は残し不要な会社は売る」ではダメ、日立がグループ会社の再編に成功した「ただ1つの理由」
日立製作所はこれまで上場子会社の売却や非連結化を活発に行ってきた。一方で、日立ハイテクなどルマーダと親和性が高く、社会イノベーション事業を進展させるために必要と判断したグループ会社は、完全子会社化したり合併したりした。 東原敏昭会長は、初の著書『日立の壁』で、いわゆる日立グループの再編がどうしてスムーズに行われたのかについて詳しく語っている。 【写真】日立の改革を牽引した東原敏昭会長 「この会社とこの会社を一緒にすればシナジーがある、という理論だけでは反発が起こってうまくいかない」という。今だから語る、再編のカギとは―――『日立の壁』より抜粋・編集してお届けします。
■再編という大仕事 日立は2016年から8社の上場子会社の売却や非連結化を行ったほか、画像診断関連事業をはじめ資産の売却を行ってきました。売却価額は合計で2兆円以上に上ります。 一方で、日立ハイテクなどルマーダと親和性が高く、社会イノベーション事業を進展させるために必要と判断したグループ会社は、完全子会社化したり合併したりしました。 いわゆる日立グループの再編です。その結果、2008年度末には22社あった国内の上場子会社は、2022年度にはゼロになりました。
社会イノベーション事業の拡大や、世界ナンバーワンの事業を育てるために必要だと判断した買収も積極的に行いました。日立ハイテクなどの完全子会社化のためにも株式を取得しましたから、総投資額は3兆5000億円以上になりました。 CEO就任前の2015年度末の日立の総資産は約12兆6000億円ですから、再編のインパクトの大きさがわかると思います。これも、社内革命といってよいほどの大改革だったと思います。大赤字を出したあとの2009年以降、グループ連結の売上は9兆~10兆円規模で推移していますが、この間の事業売却と買収で、その売上のうち実に30~50%が入れ替わっているのです。
中でも、日立グループの再編は大仕事でした。基本方針は、事業環境を踏まえ、事業の将来の成長を見据えて、どのような形にするのが日立グループ、そして当該事業にとって望ましいか。完全子会社化し取り込むか、日立グループよりも大きな事業成長を実現できるパートナーを見つけて株式を一部またはすべて譲渡し、非連結化するかです。2016年には日立物流と日立キャピタル、2017年には日立工機と日立マクセル、2018年には日立国際電気、2019年にはカーナビ事業のクラリオンなどの売却・非連結化を行いました。