ますます広がる「おひとりさまビジネス」 約4割を占める単身世帯数が強力プッシュ
1人で居酒屋で飲む、レストランで食事する、喫茶店でコーヒーを飲む……。筆者にとってはごく当たり前のことなのだが、いま飲食業をはじめ観光、ホテル・旅館業などさまざまな業界でおひとりさまを歓迎する「おひとりさまビジネス」が広がっている。 石田ゆり子の資産総額は7億円! 54歳で独身貫く“美しすぎる不動産女王”の気になる今後 例えば、焼き肉を食べたい時、1人で行きにくいのが焼き肉屋だが、「焼肉ライク」(本社・港区)では、カウンターに1人1台のロースターが搭載され誰にも気を使わず自分のペースで食べられる。 また、1人でラーメン屋に入りづらいという人向けに、九州・博多を本店とし、全国80店、海外にも出店しているラーメン専門店「一蘭」は、個室のような両側を仕切られた「味集中カウンター」がおひとりさまの女性に人気だ。 ネットでひとり旅を検索すると、「1人で泊まれる温泉旅館」「おひとりさま限定ツアー」「エステ、マッサージ付きのおひとりさまホテル」などおひとりさまを対象にした旅行プランがめじろ押し。旅行評論家で経営コンサルタントの瀧澤信秋氏が「おひとりさまビジネス」の広がりをこう述べる。 「飲食業界はもちろんですが、コロナ禍での外出制限が解除され、おひとりさまを歓迎する観光、ホテル・旅館業界はさまざまな工夫で顧客を確保しています。人との接触を避ける傾向が広がり、企業が開催する忘年会や新年会の参加も若い世代を中心に敬遠する動きが出始めています。誰の目も気にせず、自分のやりたいことを自分のペースでやれるおひとりさまビジネス市場は、今後さらに拡大していくでしょう」 ■背景にある未婚者数の増加 こうした「おひとりさまビジネス」を後押しするのは、少子化につながる未婚者数の増加だ。総務省が5年ごとに行う国勢調査によると、生涯未婚の数は3279万76人(2020年調査)と前回(15年)に比べ105万人以上増え、生涯未婚率は29.5%に達している。未婚男性は1854万4172人と前回比約64万人増加、女性は1424万5904人と約42万人増えているのだ(不詳補完値)。 また、厚生労働省の厚生労働行政年次報告(22年度)による2020年の単独世帯数は約2115万世帯で、単独世帯は世帯総数の約4割まで占めている。 年齢階級別未婚率では、20歳から24歳の男性は95.7%、25歳から29歳では76.4%。女性では同年代で93%、65.8%と未婚者が多いことに驚く。 適齢期の若者の未婚者や、1人暮らしの高齢者が年々増える社会で、自由気ままに生きる「おひとりさまビジネス」の必要性は今後さらに高まるだろう。一方、ライフスタイルが多様化するなか、将来の不安に目を向けた「おひとりさま向け」の支援、政策を進める必要がある。 (ジャーナリスト・木野活明)