「外国人の入校断ることも」 運転免許試験は多言語に対応しても、教官そろえられない教習所 「学べる環境なければ…」切実な声も
試験の多言語対応が進む一方で
長野県内で自動車の運転免許試験の多言語対応が進む一方で、試験を受ける前の教習などでは外国語に対応していない場合が多く、外国人からは依然として免許取得が難しい―との声が上がっている。日本語が得意ではない外国人が、試験に向けて交通ルールや運転技術などを学べる環境づくりが求められている。 【グラフ】長野県内在住のベトナム人はこの10年で急増
「学べる環境がない」
「ベトナム語で(運転技術を)学ぶ環境がない」。県内のベトナム人有志が昨年設立した県ベトナム人協会のフアム・クアン・ダオ会長(34)=千曲市=は指摘する。同協会や特定技能のベトナム人を支える県内の登録支援機関によると、ベトナムで既に免許を取得していれば書類審査などで日本の免許に切り替えることができ、ベトナムでは来日前に免許を取得するべきだ―との意識が浸透しているという。
費用や仕事との兼ね合い、ハードルに
新規に免許取得を希望するベトナム人にとっては、費用や仕事との兼ね合いといったハードルがある。加えて交通ルールを日本語で学ぶのは難しく、フアム会長は「試験だけ多言語で可能になっても、実際の教習、指導が対応していなければあまり意味がない」と訴える。県内の登録支援機関の関係者によると、ベトナム語での対応が進んでいる県外の教習所に通っているケースもある。
教習所、予算面でも制約
長野市内のある教習所は、ベトナム語を含め複数言語の教材を備え、希望に応じて教習に通訳が同乗することもある。ただ、外国語ができる教官をそろえるのは予算面の制約もあり「教官が外国語で指導するのは難しい」とする。北信地方のある教習所は、申し込みの時点で日本語での意思疎通が難しい場合は「入校をお断りすることもある」と明かす。
「供給に見合う需要あるか…」
国は特定技能の対象分野拡大に伴い来日する外国人のさらなる増加を見込んでおり、警察庁は5月に都道府県警に出した通達で、外国人が円滑に運転免許を取得できる環境整備を求めている。県内の教習所でつくる県指定自動車教習所協会(長野市)は「各教習所が工夫して取り組んでいるが、地域によっては供給に見合う需要があるかという問題もある。対応が進むのはこれから」としている。