躍進するスペインの新政党「ポデモス」は極左なのか 首都大学東京教授・野上和裕
2014年末のヨーロッパ最大の話題の一つは、ギリシアで次期大統領が決まらず、議会の解散総選挙になったことでしょう。1月25日に予定される選挙で誕生する新政権が、今の緊縮策を放棄しないよう、IMFやECB(欧州中央銀行)、ドイツ政府が露骨にけん制しています。政策転換を図る最大野党の急進左派連合「SYRIZA」(スィリザ) が政権を握る可能性があるからです。スペインには、スィリザと同じく、緊縮策からの離脱を唱え、スペインの政権の座をうかがう政党があります。それが「Podemos」(ポデモス)です。
「ポデモス」の考え方は?
ポデモスは、2014年1月にできたばかりの新政党で、ほとんどネットを使った運動だけで、5月の欧州議会選挙でスペイン第4の政治勢力となりました。ポデモスの台頭は、スペインの政治に大きな衝撃を与えています。結党大会が10月で、執行部が作られたのは11月です。それでも各種世論調査では、断トツの支持率を得ています。現在総選挙を行なうと、下院350議席中、ポデモスが100を超える議席を獲得すると予想されています。 ポデモスとは、オバマ氏が2008年のアメリカ大統領選挙で使った「Yes, we can!」というキャッチフレーズに対応するスペイン語です。後で触れるように、ポデモスは、極左というレッテルが貼られていますが、左翼というよりも、市民の政治への声を強めようという市民運動の延長上にその理念がある政党です。 ポデモスは、スペインの民主主義が曲がり角に立っていると考えています。スペインは、1975年にフランコ将軍が死去するまで40年もの間、独裁制の下にあり、その後急速に民主化を遂げました。彼らは、現在の1978年憲法体制の下での保守の人民党(PP)と社会労働党(PSOE)の二大政党制が閉鎖的な特権階層(カースト)を作っていると考えます。市民は、政治から排除され、無力感を持っています。そこで、政治を市民の手に取り戻そうと作ったのがポデモスです。