躍進するスペインの新政党「ポデモス」は極左なのか 首都大学東京教授・野上和裕
ヨーロッパの中で比較すると
ポデモスは、他のヨーロッパの新左翼と異なっています。第一の違いは、そのヨーロッパ指向です。イグレシアス氏は、ヨーロッパの統合が反ファシズムの民主主義から生まれたと述べ、いわゆるヨーロッパ懐疑主義やEU離脱論とは無縁です。第二の違いは、ポデモスが左右対立の克服を目指す中道指向にあります。実際、ローマ教皇の演説にも国王のクリスマス・メッセージにも、PPやPSOEと同じく賛辞を送っています。それなりに「行儀がよく」穏健なのです。 なお、既成政党に対する挑戦を行なう勢力として、イタリアのベッペ・グリッロの「五つ星運動」と同種のものと誤解されることがあるのですが、その歳出削減・民営化路線とは対極にあります。
新たな民主主義の「実験」に
ポデモスの政策は社会民主主義的なのですが、リーダーたちは、「金融オリガルキア」とか「カースト」といった新左翼の刺激的な用語を多用します。それでも、彼らのほとんどが大学教授や学者ですから、「人々にわかりやすい単純なメッセージを繰り返すことにより支持を拡大する」というポピュリズムと正反対に、実は説明が回りくどくなり、話がまどろっこしいのです。そのためキャッチフレーズや紋切り型の「イエスかノーか」が好きなマスメディアと話が全くかみ合わないので、「本当の政策を隠している」というイメージが作られました。ポデモスの台頭に脅威を感じている他の政党も、ポデモスが極左であるという宣伝を繰り返します。 もちろん、ポデモスが政権に到達したとしても、緊縮策が転換できるかは別問題です。 しかし、緊縮財政政策だけを正しいと考える今日の政治状況の下で、ポデモスは、かつての社会民主主義を再生させる試みの一つといえます。そして、同時にネット社会における新たな民主主義の政治的実験として、今後の政治を考えるヒントを我々に与えてくれるものとなるでしょう。