【米国株ウォッチ】通期の業績予測を上方修正したシスコ 株価は割高、割安それとも妥当か?
利益率の改善と、AIへのコミットの強化
■利益率の改善と、AIへのコミットの強化 このような逆風も吹く中、シスコはここ数四半期、運賃や部品などにかかるコストの切り詰めや、製品ミックスの改善などにより売上総利益率を改善させている。2025年度の第1四半期における売上総利益率、製品粗利率、サービス粗利率はそれぞれ65.9%、65.1%、68.0%であり、前年同期の65.2%、64.5%、67.3%からそれぞれ改善している。同社は、ソフトウェア・サブスクリプションやサービス契約による経常収益モデルをますます推進しており、この傾向は第2四半期以降も続くだろう。 シスコが今年行ったSplunk(スプランク)の買収は、同社がセキュリティ製品へのコミットメントを強化しようとしていることの表れである。スプランクは、AIを使用してログファイルやその他のデータを分析し、サイバーセキュリティインシデントのリスクを最小限に抑えるためのツールを提供するソフトウェア企業だ。 この買収は、AIを活用した脅威の検知と対応能力を強化するという、同社が掲げる戦略に沿ったものだ。同社はスプランクの製品をクロスセルし、収益シナジーを促進したいと考えており、既存のシスコの顧客のうち、スプランクの顧客にもなり得る企業は約5000社にものぼるという。 ■株価パフォーマンスと目標株価 過去3年間におけるシスコ株の年間リターンはS&P500のリターンよりもばらつきが大きい。シスコ株の年間リターンは、2021年に46%、2022年にマイナス22%、2023年に9%だった。 私たちは、シスコの現在の株価は適切な水準だと考えている。2025年度の予想利益をベースにしたPER(株価収益率)は約23倍だ。今年の成長率はやや減速気味ではあるものの、この倍率は妥当な水準だと私たちは考える。現在、シスコが経常収益モデルを推し進め、買収を通じてサイバーセキュリティへの注力を強めていることは、株価にとってはプラスに働くだろう。また、シスコは他のテクノロジー大手と比べ、バリュエーションが低く、恒常的に発生するネットワーク関連支出を収益の源としていることから、景気後退の局面には比較的強い銘柄でもある。 私たちは本稿で触れた背景などを考慮しつつ、シスコの目標株価を約57ドルとしている。これは現在の市場価格とほぼ同水準である。
Trefis Team