300年前からある夏ミカン「原樹」が危機 発祥の山口、行政も支援
夏ミカン発祥の地として知られる山口県。約300年前に長門市の海岸に流れ着いた果実の種が実を付け、全国に広まったという。「原樹」と呼ばれる老木は今なお当時植えられた場所に残るが、腐食が進み危機的状況に。地元住民らが「地域の誇り」と保存活動を続ける中、市も支援を本格化させている。(共同通信=井上大成) 日本海に面する長門市の青海島。島の大日比地区にある住宅の庭先に、添え木で支えられた夏ミカンの老木がひっそりと植わる。この家に住み、世話を続ける西本昭子さん(66)は「先祖が代々守ってきた木。東京や九州からも見に来る人がいる」と笑みを浮かべた。 市によると、18世紀ごろ、西本家の先祖が海岸に流れ着いた果実を拾い、種をまき、育った木になったのが夏ミカンだった。その後萩に持ち込まれ、本格的な栽培が始まったとされる。木は、国の史跡および天然記念物にも指定された。 300年余りがたち、表皮などが腐食。根にも影響が出ているとして、住民らが6年前に「大日比ナツミカン原樹の会」を立ち上げ、保存活動を始めた。原樹の会の三輪悟会長(69)は「地元にとって身近で大事なもの」と話す。
腐食防止などの応急処置に約50万円かかることなどから、今年2月に会が長門市に対策を要望。市はこれまで木の維持管理費として年4万円を支出していたが、応急処置にかかる費用も負担することに。年明けには土壌改良にも着手するという。 西本さんは「原樹の会も熱心に協力してくれる。これからもずっと見守っていきたい」とした。