【9月は認知症月間】2025年、東京の認知症高齢者は54万人へ 都医師会「“シン後期高齢者” の声で医療介護は変わる」【後編】
昨年12月に認知症抗体医薬「レカネカブ」が国内で販売開始され、今年8月に厚生労働省の専門部会で「ドナネマブ」の製造販売が承認されたが、どのようなものか。 平川「レカネマブは米バイオジェン社と日本のエーザイが共同開発、ドナネマブは米イーライリリー社が開発したアルツハイマー病の新しい治療薬です。脳内のアミロイド斑を除去して認知機能の低下を抑制する効果や、副作用のARIA(アミロイド関連虚血性神経症状)の発症率で両者に大きな違いはないとされています。 投与対象はアルツハイマー病によるMCI(軽度認知障害)もしくは軽度認知症の人です。アミロイド斑の蓄積がない人や中等度以上に進行した人は対象になりません。投与の可否判断のためにはアミロイドPET検査または脳脊髄液検査などが必須条件となり、重篤な副作用報告もあるため、投与できる医療機関の要件も厳しくされています。新薬といっても従来薬同様、認知症の進行そのものを止める効果はありませんし、重篤な副作用への配慮や年間約300万円とも言われる薬価を考えるとしばらくは慎重な対応が必要かと思います」
今後の超高齢化社会に向けての展望を教えてください。 平川「そもそも認知症は長寿社会の証しでもあります。今後も超高齢化が進展する日本では、認知症の人がいるのが当たり前の世界になっていくのです。認知症の人を排除するのではなく、尊厳を持って共生する社会を目指すのが認知症基本法だと思います。認知の人が暮らしやすい社会は誰にとっても暮らしやすい社会です。 これから先はビートルズやレッド・ツェッペリンを聴いて、ツイッギーのミニスカート姿に憧れていた団塊の世代(1947~1949年生まれ)が後期高齢者になります。私は “シン後期高齢者” と呼んでいますが、彼らは厳しい競争社会を生き抜いた強者ですから、従来の折り紙を折って童謡を歌い、入浴や食事介助を提供するといったステレオタイプな介護サービスには満足せず、個別性やエビデンスのあるケアを求めてくると推測しています。 彼らが “認知症のどこが悪い” “余計な手出しは無用” などさまざまな声を上げていけば、医療介護の在り方や提供体制も変わるのではないか……不安もありますがそこに期待しています」
TOKYO HEADLINE・後藤花絵