「40代では早く60代では遅い」50代からはじめる“新・断捨離”で不安やイライラを解消!
死別を乗り越えて「おひとりさま」暮らし
現在、義永さんはひとり暮らしをしている。近年にプライベートで不幸が重なった。 「2020年には実の父、パートナー、その母を亡くしました。そのときはもちろん悲しかったのですが、感謝の気持ちがあふれ、いい形でお別れができました。 モノとの向き合い方を学んだことで『モノも人も、いつかはさよならするもの』という意識が芽生えていたからこそ、大切な人の死を受け入れることができたと思います」 3人の遺品整理をする中で、義永さんは「あの世にモノを持っていくことはできない」と実感し、さらにものを減らすため自宅のリフォームを敢行。容量を最小限にした「見せる収納」にすることで、自然とモノの量が減る仕組みを作った。 かといってモノをただストイックに減らすわけではなく、趣味のフルートや「推し」にまつわるグッズなどを持つことは我慢せず。好みが変われば過去のものは潔く手放しながら、今必要なもの、好きなものだけに囲まれる生活を満喫している。 「住まいを見せることは自分を見せることで、『どこから見られても大丈夫』という自分への信頼感が増しました」
仕事場でも残業時間を大幅に短縮できるように
50代は仕事での悩みも多いが、義永さんもまた同様。職場では部下に対しても言いたいことが言えない状況だったという。 義永さんは自宅での断捨離経験を生かし、不要な 書類を整理したり、汚れていた水回りを掃除するなど、環境の改善に取り組んだ。 日頃からモノを取捨選択するようになったことから、仕事でも選択決断が早くなったそう。自分に自信がつき、伝えるべきことははっきり言えるようになったという。 「前の部署で管理職を任されていたのですが、残業が多く職員は疲弊していました。電話対応などで、仕事が中断されることが多いと気づき、一切電話を取り次がない『集中タイム』を設けるなどさまざまな取り組みで、残業時間が半分になり、職場のチームワークも良くなりました。 これも環境を改善することで集中できるようになったため」 義永さんは、いずれ断捨離トレーナーとして独立を考えている。 「モノを片付けることが人生の課題を片付けることとなり、自分らしい人生を開くきっかけを多くの人に与えていければと」 抱えているものを見直した先の60代、70代には、きっと終活という言葉もいらないほどの身軽で解放的な時間が待っている──。そう義永さんは明るく語った。 お話を伺ったのは……義永直巳さん●50代。京都市在住のひとり暮らし。自宅で月1回の「ダンシャベリ会」を開き、断捨離で人生を切り開きたい人を応援している。 取材・文/野中真規子