阪神・矢野監督の仕掛けた9回勝負手に賛否
阪神は5日、ZOZOマリンで行われた交流戦のロッテ戦に4-5で惜敗、9回の同点機をまさかの併殺で潰してゲームセットを迎えるという最悪の終わり方に賛否の声が巻き起こっている。 問題の場面は1点を追う土壇場の9回に起きた。ロッテの“守護神“”益田からマルテが粘ってヒットで出塁。ベンチは快足の植田を代走に送り、二盗を決め、梅野が内野ゴロの進塁打。理想的な形で一死三塁の同点機を作った。益田はプレッシャーをかけられあっぷあっぷ。ここまでは、足を絡める今季の矢野阪神を象徴するような展開だった。 だが、悪夢が起きる。次打者・高山の快音を残した鋭い打球がレフトを襲ったが、前進してきたロッテの清田がグラブの土手部分でキャッチ。そして、あろうことか、三塁走者の植田はホーム付近まで走っていて、帰塁することができず併殺が成立、ゲームセットとなったのだ。レフトスタンドは溜息に包まれ、打った高山も茫然。植田も下を向くしかなかった。 これだけを見ると植田のボーンヘッド。だが、試合後の会見で矢野監督は、これがベンチのサインだったことを明らかにし、潔く「オレの責任」と植田を責めなかった。つまりベンチは植田に「ギャンブルスタート」のサインを出していたのである。 一死三塁のケースでベンチが三塁走者へ送るサインは3種類ある。 「ゴロゴー」、「ゴロストップ」、「ギャンブルスタート」の3種類だ。このケースで矢野監督が出したサインは「ギャンブルスタート」だったと思われる。「ゴロゴー」と「ギャンブルスタート」の違いは、前者は打球をゴロと確認したときのみスタートを切るというもので、後者はゴロであろうが、フライであろうが、バットにボールが当たった瞬間にスタートを切る。走者のスタートのタイミングがまったく異なるため、本塁ベース上でクロスプレーとなった場合、「ギャンブルスタート」の方がセーフとなる確率が高い。 「ゴロゴー」の場合、ゴロを見極める手段として様々なテクニックがあるが「ギャンブルスタート」の場合、注意するのは空振りしたケースのみ。その他の打球結果については「仕方がない」とされている。 植田はバットにボールが当たった瞬間にスタートを切っていた。打球の行方を見ながらもストップはしなかった。その対応ミスはあったのかもしれないが、滞空時間のあるフライならまだしも鋭いレフトへのライナーでは、いくら好判断で引き返しても帰塁は間に合わなかっただろう。 悪いのは植田ではなく、ゴロ、犠牲フライを打たなかった高山、そして、その作戦を選択したベンチの判断ということになる。