試合中、ボールを持って突進するヘリオッツの忽那健太＝本人のX（旧ツイッター）より

【ノーサイドの精神】 2度のぼうこうがん手術を乗り越え、スコットランドで日本人初のプロ選手を目指してきた忽那健太（30）の2シーズン目の挑戦が始まった。 『今日12番で出場します。クラブを代表して戦える事が心底嬉しい』（8月31日の開幕戦前。以下、原文ママ） 『難しいけど、面白い。練習あるのみ』（9月4日。ゴールキックについて） 『レベルの高さは確実に昨年以上。マジで楽しい！！』（9月12日） 日々、更新している忽那のSNSには前向きで充実感に満ちた言葉が並ぶ。今月13日に誕生日を迎えたときは『昔、想像してた30歳と全く違います。でも想像してたより100倍面白い30歳です。もっと加速します！』とつづっている。 だが、数カ月前はそんな日々が訪れるとは想像もできなかった。 愛媛・松山市出身で、石見智翠館高（島根）、筑波大からトップリーグ時代のホンダ（現・三重）に進み、SOやFBとしてプレーしていた忽那は26歳だった2021年夏にがんが発覚。命が終わることも覚悟する中、「人生でやりたいと思っていたことを全部やろう」と、ラグビーの母国イギリスでプロ選手を目指すことを決意する。 昨年4月、住むところも仕事も何も決まっていないまま、スコットランドに渡航。自作の履歴書を送って自らを売り込み、トライアウトを経て5月、首都エディンバラにあるアマチュアトップリーグ所属の「ヘリオッツ」への入団が決まり、プロを目指す生活をスタートさせた。 1年目は順調…の、はずだった。 チームメートの紹介で生活費を捻出するための引っ越しのアルバイトや住居も決まり、生活の基盤ができた。友人も増えた。仲間の信頼も勝ち取り、10チームがホーム＆アウェーで争う9月開幕のリーグ戦のほとんどにも出場した。 だが、シーズン終盤の今年2月、目標だったプロ契約の舞台となる同国最高峰セミプロリーグ「フォスロックスーパーシリーズ」が経営難から同シーズン限りで消滅することが突如、発表されたのだ。 忽那はすぐにSNSで『今後のプランは決まっていません。一切の白紙に戻りました』と報告した上で、自らの思いを語っている。