伊藤詩織さん初監督作が米アカデミー賞長編ドキュメンタリー部門ショートリスト選出 日本人初
ジャーナリストの伊藤詩織さん(35)が、初めて監督を務めたドキュメンタリー映画「Black Box Diaries」が18日、第97回米アカデミー賞の長編ドキュメンタリー映画賞のノミネート作を決定するための、ショートリストに選出された。日本人の監督の同賞ショートリストへの選出は、米アカデミー賞で史上初の快挙となる。 「Black Box Diaries」は、伊藤監督が15年4月に元テレビ局員の男性から受けた性的暴行被害について、調査に乗り出す様子を自ら6年にわたって記録したドキュメンタリー。 伊藤監督は、今年7月9日に「Black Box Diaries」の上映が行われた、アゼルバイジャンのバクーから帰国。その足で、17年に提訴したに元テレビ局員の男性による性的暴行に対する訴訟と、自民党の杉田水脈前衆院議員(57)らのSNSによる誹謗(ひぼう)中傷に対して20年に提訴した件の裁判に関する報告会を都内で開いた。 その中で「8年間、自分に起きた出来事と、民事裁判で感じたこと、そして最初はジャーナリストとして強がって向き合っていたんですけど、個人としてどういった気持ちでいたのか(性暴力)サバイバーの視点も入れて、ドキュメンタリーを製作した」と製作の経緯を説明した。 その上で「どうやったら一連の経験、ノウハウを発信できるかなと思って。まず、私にできることは、ドキュメンタリーのストーリーテラーとして、私側ワンサイドになってしまうのは、すごく悩んだんですが、それでも経験させていただいた裁判、事件のその後を形にした。皆さまに届けられれば、というのが願い」と続けた。 日本での公開時期は未定だが、今年1月にサンダンス映画祭(米国)で行われた上映を皮切りに、現時点で50以上の映画祭で上映され、18個の賞を受賞。30以上の国と地域での配給も決まっている。また、伊藤監督は“ドキュメンタリー界のアカデミー賞”とも称されるIDAドキュメンタリー賞で、新人監督賞を受賞。EU議会や英国国会、UN Womenや国連腐敗防止条約などでも、本映画の講演を行ってきた。 伊藤監督は7月の会見で、映画として形にした意義も強調した。サンダンス映画祭でのワールドプレミア上映を振り返り「今まで、テレビだったりネットのドキュメンタリーを主に作ってきた。初めて映画という形で作ってみて、すごく感じたのは、同じ映画館に入って、名前も知らない…でも隣の人たちと一緒に見て、空間シェアでき、その後、少しの会話ができるところに、すごく映画の可能性を感じた」と手応えを口にした。 最終的なノミネーションは、アカデミー賞の会員による投票によって、25年1月17日(現地時間)に発表される。