なぜ今、この名品がモテるのか? 【PART2】MA-1
季節を問わず、現在あらゆるブランドがカジュアルアウターの筆頭として提案しているMA-1。青春時代に袖を通したオヤジさんも多い再注目のMA-1の背景を紐解き、いま実践すべき選びとこなしをご紹介です。 大人の名品 2024年冬版
MA-1ブーム再来の理由を徹底検証!
LEONでも度々ご紹介しているように、ラグジュアリーからクラシコ、ドメスティックまで、ここ数年さまざまなブランドがリリースしているMA-1。 その名を聞くと、いまだ映画『トップガン』(もちろん2022年ではなく1986年公開の方)のテーマソングが脳内で鳴り響くオヤジさんも少なくないかと。そう、映画と同じように、35年の時を経て、あのミリタリーアウターの傑作がファッションシーンに帰ってきたのです。 ま、35年はちと言い過ぎですが、日本におけるMA-1の直近の流行は、1990年代前半に巻き起こったヴィンテージレプリカアメカジブームの一翼として大流行した、フライトジャケットブーム以来。 つまり、約30年ぶりなんですね。しかも今回は世界的なトレンドアイテムとして、モードの最前線でフィーチャーされているです。そんな現在のMA-1ブームのバックグラウンドを検証し、差がつく着こなしをマスターしようではありませんか。
かつてアメリカ空軍のパイロットたちの装備品だったMA-1。ちなみに多くのブランドがMA-1を「ボンバージャケット」と呼んでいますが、狭いコクピットに座ってもウエストが浮かないショートデザインを見ても分かるように、MA-1は「Bomber=爆撃機」ではなく「Fighter=攻撃機」用の「フライトジャケット」が正解
小誌読者のオヤジさんなら、これまで一度や二度は袖を通したことがあるはずのMA-1。それも30年近く前かもしれないゆえ、あらためてその歴史をおさらいしましょう。 MA-1の正式名称は「JACKET, FLYING, INTERMEDIATE/TYPE MA-1」、日本語にすると「中温域用の航空ジャケット/MA-1型」といったところでしょうか。そう、MA-1はかつてアメリカ空軍の航空機パイロットが飛行中に着用した、いわゆるフライトジャケットです。 そのルーツはライト兄弟の時代にまで遡ります。初期の航空機はコクピットが与圧されておらず、吹きさらしの状態。強烈な風と寒気からパイロットを護るためのフライトウェアが不可欠でした。 当初は条件の近いバイク用ウェアが流用されましたが、高高度まで飛行が可能になるとレザー一枚では防寒性能が足らず、ムートンや中綿入りへと発展。戦後になると軽量かつ丈夫で防風性もある当時のハイテク素材ナイロンが採用され、ウールパイルというウールコットン製の中綿をナイロンの表地と裏地で挟む構造が開発されました。 そしてジェット機時代になるとパイロットがハードヘルメットをかぶるようになり、それまでのムートン製の襟ボアが邪魔となったため、首元にフィットするニットリブ製の襟が登場。そして1957年、リブ襟を正式採用した初のモデル「TYPE MA-1」が誕生したのです。 画期的なナス型のリブ襟と袖リブが付いたMA-1は、民間衣料にも多大な影響を与えました。その後のスポーツブルゾンの原型となったといっても過言ではないでしょう。 やがて1970年代のロンドンで起こったサブカルチャー、スキンヘッズの御用達アイテムとなるなど、ファッションアイテムとしても注目されるようになり、1980年代にはデザイナーたちもコレクションへ加えるように。そして80年代後半には世界中でトレンドアイテムとなり、大流行したのです。