渋野日向子がサントリーと3年3億円超の破格契約。契約背景に2021年の米ツアー本格参戦と宮里藍イズム継承があった
ゴルファーにとって所属先は、その後のプロ生活を大きく左右する。所属契約を結べば選手ファーストが当然と思われがちだが、イベントなどの出演要請などスポンサーに縛られ、引っ張りまわされるような企業は少なくない。契約金など契約内容をめぐるトラブルで所属契約を打ち切られたり、契約を更新しないケースなど、女子プロと所属先とのトラブルの例も過去にはある。その点、サントリーは伊藤園、ダイキン工業と並び、主催トーナメントも開催する優良企業で、そのホスピタリティーには定評がある。 契約を結べば事実上の終身契約と言っていい。たとえ成績不振に陥ってもクビを切られることはまずない。現役引退後も所属契約を結び、手厚いサポートを受けている宮里を見ればよくわかる。宮里は、引退翌年の2018年からは「サントリーレディス」の大会アンバサダーに就任、大会名にも自らの名前がついた。 主戦場を米ツアーに移した2006年以降、サントリーレディスに出場したのは2017年の国内での引退試合を含めて4度だけ。世界を舞台に戦う宮里の意思を尊重し、サントリーは黙ってサポートを続けている。海外挑戦にはピタリのバックアップ企業。2021年からの米ツアーへの本格挑戦を表明している渋野にとって、宮里が敷いてくれたレールがサントリーを所属先に選んだ最大の理由だろう。 記者発表でも「2021年から米ツアーで戦えるように、この1年をしっかり戦っていきたい」と宣言。ホステス大会という縛りから解放され、心おきなく米ツアーに集中できる環境を手にしたメリットは大きい。 宮里とのトークショーでは米ツアーに参戦したときの英語ができない不安を渋野が訴えると、宮里は「英会話はことのほか重要ではないよ。伝えたいことの半分伝われば大丈夫だよ」と優しくアドバイスを送り、渋野は「自信もっていけそうです」と、“藍イズム”の継承を誓った。 6月11日に開幕する今年のサントリーレディスには出場する。その前週には全米女子オープンに出場予定で強行日程となるが、「去年の大会はズタボロ。今年はホステスプロで、30回の記念大会。みんなに負けないように頑張りたい」と、やる気満々。ただ米ツアーの出場権を獲得した場合、来年以降は、ホステス不在の可能性が極めて高くなるが、そのことも含めて海外へ挑む“藍イズム”の継承なのだろう。サントリーへの所属は渋野が、さらに大きく飛躍するためのベストの選択といえる。
渋野は今後、タイで合宿を行い、課題のグリーン周りの技術アップや100ヤード以内のアプローチの精度アップに時間を割き、2月上旬に帰国。国内で調整後、再びタイに向かい、2月20日から今季初戦となる米ツアー「ホンダLPGAタイランド」(サイアムCC)に主催者推薦で出場する。 その翌週の2月27日からは、シンガポールでの米ツアー「HSBC女子チャンピオンズ」(セントーサGC)に出場予定。「世界ランキングを維持、上げるためには一試合も無駄にできない」と覚悟を決めて臨むシーズンが始まる。