“朝ラー”に“京の朝食”に…旅の目的にしたい朝ごはん4選【人気料理家arikoさんのおいしい大人旅④】
朝食も旅の目的のひとつになる
お宿の朝ごはんといえば、大分別府にある「岡本屋旅館」の郷土色豊かな朝食も、ちょっとほかでは食べられない思い出に残るもの。温泉地ならではの“地獄蒸し”(前々回でご紹介しました)と呼ばれる蒸篭で蒸した新鮮な野菜に、地元で獲れた新鮮な魚を九州のちょっと甘い醤油と胡麻で和えた名物りゅうきゅう、平打ちのうどんのような麺をお出汁といただく“だんご汁”など、どれもヘルシーでお腹に優しい。いわゆる派手な“THE名物料理”ではなく、しみじみおいしい、その土地で日々リアルに食べられているご当地料理に出会うのに、朝食はいいチャンスなのかもしれません。 朝食を旅の目的の一つとして出かけることもあります。たとえば京都。モーニングがいただける老舗の喫茶店がたくさんあり、ホテル選びの段階から、お目当てのお店に行きやすいことを念頭に探したりもします。 「イノダコーヒ」もそんな老舗かつ人気店のひとつ。クラシックなインテリアの中、ピカピカに磨かれたシルバーのカトラリーを前にすると、期待に思わず背筋が伸びます。その名も“京の朝食”と名付けられたモーニングは白いプレートにスクランブルエッグやハム、サラダ、フルーツなどを盛り合わせたもの。それをサクサクのクロワッサンといただきます。香り高く淹れたコーヒーとともに、優雅なひとときを満喫するのが京都の朝の楽しみになっています。 「伊吹いりこセンター」というお店で、朝からラーメンをいただいたのは香川でのこと。その名前から、いりこの加工場かなと思っていたのが、まさかのラーメン屋さん。観音崎の漁港前にあるお店で、こちらでいただけるいりこスープのラーメンが、何ともさっぱりしていながら味わい深いのです。大人の胃袋的には朝からラーメンなんて、と東京では思うところですが、香り高いスープはスルスル飲み干してしまうほどで、朝食にぴったりのラーメンでした。 元々は朝の早い漁師さんたちのために作っていたラーメンが評判を呼び、わざわざ遠くから食べに来るお客さんで朝から行列のできる人気店になったそう。さぬきうどんにもちょっぴり飽きてきたなあ、などというわがままな旅人にじんわり沁み入る最高の一杯になりました。 こうした非日常の朝の景色を楽しみながらいただく朝食は、旅の思い出を一層、鮮やかに彩ってくれるもの。旅の醍醐味のひとつではないでしょうか。今回、刊行となる『添乗員ariko まだまだおいしい日本の旅』でも、忘れられないおいしい朝ごはんをご紹介しています。ぜひご一読していただけたら幸いです。 ariko/ありこ 人気ファッション誌を担当するエディター、ライター。インスタグラム(@ariko418/フォロワー数22万人超)でのセンスあふれる料理の写真と食いしん坊の記録が話題を呼び、「おいしい情報なら間違いない」と信頼される存在に。レシピ本を多数刊行している料理家でもある。著書に『arikoの食卓』シリーズ(ワニブックス)、『arikoのごはん』『arikoのおいしいルーティン』(講談社)、『ありこんだて』(光文社)ほか。 文/ariko