東京はもっと緑化に向き合える。シモキタ園藝部から考える、都市緑化の可能性
また東京23区とほぼ同じ面積のシンガポールでは、1960年代から「ガーデン・シティ」というキャンペーンで植樹・緑化を始めるなど、世界的にも早くから国土緑化を推進。現在は「シティ・イン・ザ・ガーデン」を掲げ、国土の概ね3分の1程度が緑で覆われ、管理する樹木の本数は1000万本以上、街路樹は4000haを超えているといいます。
いっぽう、マドリードやシンガポールの三倍の面積である東京都が管理する街路樹は、2023年4月時点で約100万本、植樹帯 や道路緑地の面積は約230ha。他の二都市に比べればいずれの数字も劣るものの、2008年に始まった都内の街路樹を100万本に倍増する「街路樹の充実」事業により、12年もの間に100万本に増えた経緯があります。
この施策・歴史を見る限り、行政側も決して緑化政策に消極的なわけではありません。ただ、すでに都市化した東京23区内の緑化が進みにくいのもデータを見る限り事実なようです。 また、街路樹が植樹されたはいいものの、歩道で十分に成長するための根を広げるスペースが十分に確保されていないがために、本来は何百年もの樹齢を望める木々が数十年で植え替えになってしまうことも。 単なる開発ではなく、生活を重視した視点を街に落とし込みながら緑化を進めるためには、さまざまなハードルがあります。ただし、そんなハードルを乗り越え、市民と行政、民間事業者が関係性を築きながら都市緑化を実現したケースも。 その一つである東京・下北沢駅前、小田急線の線路跡地を取材しました。
1.7kmにわたる豊かな植栽と、シモキタ園藝部
小田急線の下北沢駅を降り、世田谷代田方面へ立体歩道を降りると、すぐ目の前に土が敷かれ、野草が広がっています。ここは線路跡地の活用プランを世田谷区と小田急電鉄、市民が共同で構想し、現在も市民が「シモキタ園藝部」という名前で植栽管理を行うエリアです。 『のはら』と呼ばれるこのエリアは2020年にオープンし、およそ713平方メートルの敷地の中に、樹木や野草が生い茂るように植栽されています。